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    Chronicle of an Amnesiac
    Bhultir Khero

    - 日本/2007/ベンガル語/カラー/ビデオ/30分

    ディレクター:アニルバン・ダッタ
    撮影:オムロン・ダッタ
    編集:サンカ
    音声:サンジブ・サハ、土肥直隆
    音響効果:シュバディプ・セングプタ、丸山孝之
    音楽:プロティプ・チャタルジ
    映像技術:水沼治久
    制作協力:サタジット・レイ映画テレビ研究所、 ニロトパル・マジュムダル
    制作統括:小谷亮太
    制作、著作、提供:日本放送協会

    大英帝国時代「ベンガルの華」とうたわれた“カルカッタ”。独立戦争で闘った92歳の老兵の言葉を手がかりに、コルカタ出身の監督が忘れられてゆく街の面影と息づかいを記録する。猿を連れて街の中を歩くモンキーマンに誘われながら、路地の間から聞こえてくる糸車の音、古い建築物に反響する物売りや声マネ芸人の声を拾う。これらの記憶の断片に宿るコルカタのほのかな香りに想いを馳せる。NHKハイビジョン「シリーズドキュメンタリー熱インド」(2007)で放映。



    【監督のことば】 この映画は回想録だ。過去20年の間にインドが経験した劇的変化の裏側、消えゆく庶民文化の痕跡を、独立後の進歩と発展がもたらした画一的な情景に照らし合わせて描いている。映画の舞台は、私の街、コルカタ。年老いた住人、老朽化した建造物、ほとんど手つかずで放置されている旧市街の中に、迷宮のように入り組んだ植民地時代の歴史が深く刻まれている。

     私は映画の構想を得て以来、現代に残る断片や、過去につながる魔法の門を開けてくれる時代の肌触りや遺物から、この色彩豊かな街の歴史を描き、忘れ去られた祖先たちの記憶と私たちをつなげようとしてきた。過去をどうやって記録するか? 記録とは常に現在形の行為だ。そんなことを考えてきた。しかしある日、ミュージシャンの友人、ブラ・ダ(プラディップ・チャタルジ)と屋台でお茶を飲んでいるところに、仕事を探している90歳の老人がやってきた。驚くべき出会いだった。老人と話をしていくうちに、失われた街と、忘れ去られた時代の打ちひしがれた生の年代記が、ゆっくりと目の前に広がっていった。やるべき仕事を見つけたのは私たちの方だった。それからの1年半は、この90歳の愛すべきアミヨ・ダ老人のとりこだった。彼は、映画を導いてくれただけでなく、生と時について、より深い認識と理解を私たちに与えてくれた。

     アミヨ・ダは、映画の完成を待たずして、現れたときと同じように、突然私たちの前から姿を消した。しかし、忘れ去られた時代と消えゆく記憶を映画の中に記録するため、私たちが拾い集めてきたカケラに、彼は新しい命を吹きこんでくれたのだ。


    - アニルバン・ダッタ

    1975年、コルカタ生まれ。脚本家としてキャリアをスタートし、後にサタジット・レイ映画テレビ学校(SRFTI)で演出と脚本を学ぶ。SRFTI在学時に作った短編ドキュメンタリー『Here Is My Nocturne』(2004)は、国内の主要映画祭で上映された。SRFTI卒業制作映画『Tetris』は、2006年カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、その他の映画祭にも出品された。2007年にNHKのために制作された本作は、卒業後初の作品になる。同作はインドのケーララで開催されたSIGNS 2007で、ジョン・アブラハム最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。最新作は『.in for motion』(2008)。