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インターナショナル・コンペティション

審査員
クリスティン・チョイ


-●審査員の言葉

 一見、ドキュメンタリーというジャンルを定義するのは難しいことではないようにみえる。ドキュメンタリー作品は、何をおいてもまず人々が、私たちに語ってくれる人生である。しかし私たちは、人が個人的な話を打ち明ける時、それが選択された記憶であることを知っている。ドキュメンタリー作品はパズルであると言ってもいい。物語Aがあって、それは何となく物語Bと関係していて、物語Bは物語Cと何の関連性もなく、だが物語Cと物語Dとは絶対につながっていて、物語Dは独自に物語Aと内面的つながりがある……。

 そこで、シンプルな、かつ捉えどころのない質問に答えるために、私は各要素を解体しなければならない。「“真実”とは何か? 複数の“真実”とは何か? 嘘とは何か?」 そして物語の中に隠された議題を発見しなければならないのだが、それらはいくつかのカテゴリーに分類されるようだ:正義のための叫び、アイデンティティの探求(グループまたは個人として)、声高で明瞭な国家のプロパガンダ。ドキュメンタリー作家とは、それゆえに、複雑なる環境――心理的、社会的、人種的、政治的状況――の中で、ヒントや解決法を探していくのだ。そして最後に、これら要因の生まれた古い発生源を再訪するのである。

 ドキュメンタリーという言葉それ自体が、ドキュメント、つまり視覚的テキストであることを意味している。ドキュメンタリーはどんな媒体よりも力を持つ。それは言葉と視覚の両方を捉え、最下層の声として、体制が隠したままにしておきたい事実の一面を開示するからだ。どんなハリウッドの劇映画も、扱っている主題がティーンのセックスであろうと、ノルウェーの海賊だろうと、マンハッタンの日本人ビジネスマンであろうと、何であろうと、ドキュメンタリーに敬意を払うべきだ。可笑しなことに、その逆は成立しない!


クリスティン・チョイ

上海生まれ。1967年に渡米。50作品以上を様々な形式において製作または監督している。コロンビア大学にて建築の修士号を取得、アメリカン・フィルム・インスティテュートからは演出の修了証書を受領。ニューヨーク大学にて教授、また大学院には映画テレビ・プログラムの学科長として携わった。イェール大学、コーネル大学、ニューヨーク州立大学バッファロー校でも教鞭をとった。オスカー候補も含め、国際的に60以上の受賞歴がある。グッゲンハイム、ロックフェラー、アジアン・カルチュラル・カウンシルなどから多くの研究奨学金も受領。代表作は『Mississippi Triangle』(1982-83)、『Best Hotel on Skid Row』(1990)、『天皇の名のもとに』(1995)、『世界に轟いた銃声』(1996-97)、『Ha Ha 上海』(2001)など。


誰がビンセント・チンを殺したか?

Who Killed Vincent Chin?

- アメリカ/1988/英語、中国語/カラー/16mm/84分

監督:クリスティン・チョイ
撮影:クリスティン・チョイ、ニック・ドゥ−、カイル・キップ、アル・サンタナ
編集:ホリー・フィッシャー 製作:レニー・タジマ
製作総指揮:ファニアータ・アンダーソン
製作会社、提供:フィルム・ニュース・ナウ・ファウンデーション

1982年、日本企業進出による不況下のデトロイト。ひとりの中国系アメリカ人、ビンセント・チンが、自動車工場から解雇されたイベンスに日本人と間違えられバットで撲殺された。この理不尽な殺人に対する不釣り合いな軽い量刑。この判決が発端となり大規模な抗議活動へと発展していく。近親者や目撃者の証言、報道映像などを折りまぜながら事件の本質に迫る。



雀の村

Sparrow Village

- アメリカ/2003/英語、北京語、苗語/カラー/ビデオ/27分

監督:クリスティン・チョイ 撮影:クーリン 
編集:リシン・ユ 製作総指揮:リリー・W・リー 
製作:パット・K・P・ヤン、クリスティン・チョイ 
製作会社、提供:滋根基金會、フィルム・ニュース・ナウ・ファウンデーション

中国南西部、苗族の住む雷山の生活は質素だけど品格を漂わせている。基礎教育を受けようとする少女たちを追うことで、過渡期の社会における女性の野心や葛藤を見つめる。



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