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10月5日(金) no.3




 
ONE CUT
亀井文夫、再評価のきっかけに
ヤマガタ・ドクス・キングダム
ドキュメンタリーについてのセミナー 10月8日(月)
アジア千波万波
『ニュースタイム』
アッザ・エル・ハサン監督からのメッセージ
日本パノラマ
『そして彼女は片目を塞ぐ』

根来佑監督インタヴュー
日本パノラマ
『ていちゃんのルーツ』 『35度4分』
田中見和監督インタヴュー



ONE CUT

亀井文夫、再評価のきっかけに
亀井文夫はこれまで、戦時中の信念ある「反戦」作家として偶像視されて語られる傾向にあった。しかし彼自身にしてみれば「自分なりの立場で'国策に協力しただけ」であり、そうした評価は、所属会社東宝と当局との関係において外側から形成されたものであった。このような矛盾を抱えたドキュメンタリスト亀井文夫の国際的な再評価が、今回のこの特集をきっかけに始まることを期待しています。
(ソラリス・亀井特集 牧野守氏講演より)


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ヤマガタ・ドクス・キングダム
ドキュメンタリーについてのセミナー
10月8日(月)


 ポルトガルのドクス・キングダムは、最近の優れたドキュメンタリーの上映、およびそれについて広範囲に話し合う事を目的にしているセミナーです。通常、映画祭は映画の話をするのに格好の場ですが、特に大きな映画祭になると、話はしばしば資金集め、製作、プログラミング、配給など、実際的な問題になってしまう傾向があります。しかしこのセミナーで我々がより関心を持ったのは、ドキュメンタリーそのものについて話す事でした。すなわちドキュメンタリーの新しい傾向、最新技術の利用と影響、仕事方法やスタイルなどについてです。

 ポルトガルで行われたドクス・キングダムは映画祭として開催された訳ではないので、事前にプログラムを組む必要がありました。ここ山形国際ドキュメンタリー映画祭では、期間中に多くの人がたくさんの映画を見るという機会を活かしたかったので、事前にプログラムを作ってくる必要がありませんでした。プログラムは、こちらで見る映画や、すでに始まっているディスカッション(例えば香味庵にて)をもとに、これから発展していくでしょう。

 このセミナーの名前は、ロバート・クレイマーの映画の題名の1つを冠していて(彼は1987年に『ドクス・キングダム』を製作)、今回は彼の特集もありますが、このセミナーは彼の作品についてではありません。ロバート・クレイマーについて触れない訳ではありませんが、それが出発点ではないという事です。特にインターナショナル・コンペティションやアジア千波万波の映画、またチャレンジングで挑発的な話し合いをできる映画に焦点を当てたいと思います。ディスカッションを活発なものにするために、セミナー中に再上映するかもしれない映画、一部を見せたい映画を、向こう数日間で選びます。もしかすると何人かのフィルムメーカーに声をかけて、セミナーのパネリストとして参加して、自分達の映画について話して下さるよう頼むかもしれません。この映画祭では約170本の映画が上映されますので、トピックをセミナーで上映する映画だけに限る事はしません。多くの皆様が、ドクス・キングダムのトピックとして話すのにふさわしい他の映画を見ているかと思います。

 セミナーは2つか3つのセッションに分けられ、それぞれのセッションは映画、またはいくつかの映画の一部の上映で始められます。それぞれのセッションでは、出発点としてテーマを設けますが、テーマの制限はしたくありません。話し合いが別の方向に発展していったら、それらがさらに活発で活き活きとした話し合いにつながる事でしょう。パネリストであるフィルムメーカー同士のダイアローグを設けますので、観客の方々も話し合いに積極的に参加していただければと思います。ですので、もし話し合いがしたかったら、または特定のフィルムメーカーがドキュメンタリーに関して何を話すかに興味がありましたら、来週の10月8日(月)、市民会館小ホールにて行われるヤマガタ・ドクス・キングダムに是非参加して下さい。プログラムは、日曜日にお知らせ致します。

ジョゼ・マニュエル・コスタ
キース・バッカー


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アッザ・エル・ハサン監督
からのメッセージ
 アジア千波万波『ニュースタイム』


昨日、今日、明日、日々の生活はどんな人にも訪れる。山形にいる私たちにも、紛争下のパレスチナの人々にも。ハサン監督にお会いできることを、私たちデイリー・ニュース編集部は楽しみにしていました。日々“紛争”という言葉を耳にする機会が多くなってきた昨今、『ニュースタイム』について、お話を伺うことは、とても重要なことだと考えたからです。“紛争”下の状況悪化により、ハサン監督が来形できなくなったことは大変残念なことです。監督へのインタビューは不可能になりましたが、監督からメールメッセージが届きましたので、ここに紹介します。


昨日、山形へ旅立つため、(パレスチナの)ラマラからヨルダン側へ渡りました。道中はひどい状況でした。到着した時点で、イスラエルが集合的報復措置として、橋を数日間、閉鎖することを知りました。状況が悪化しているようで、とても心配です。長期間国外に出ると、数カ月は帰国できなくなる恐れがあり、今、旅に出ることに不安を覚えます。土壇場でキャンセルするのは非常に心苦しいのですが、現在のところ、日々の状況の変化を予測するのが非常に困難なのです。どうかご理解下さるようお願いするとともに、重ねてお詫びを申し上げます。
山形の映画祭をとても楽しみにしていました。人々を、映画を、そしてもちろん食べ物を。お会いしたらお伝えしようと思っていたのですが、それが叶わなくなった今、私が言いたいのは、前回の山形での経験で、自分の作品に対する理解と気持ちが大きく変わったということです。ドキュメンタリーを専門に扱う大きな映画祭に参加したのは、山形が初めてでした。1週間に渡って、他の監督達と映画製作について考え、思いを巡らせました。今までとは違うやり方で仕事をしようという決意を抱いて山形から戻り、そして出来たのが『ニュースタイム』なのです。その後も多くの映画祭に参加しましたが、山形は私の物の見方を変えてくれた最初の映画祭です。だからこそ今回、山形に戻ることを待ち望んでいました。
素敵な映画祭になること、そしてご成功をお祈りしています(カタログを送って下さい)。
心を込めて。
アッザより

P.S. ここで何が起きているか知りたがっている人々のために、どうぞ酒田や他の都市でも『ニュースタイム』を上映して下さい。



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ひとりひとりのストライキ
 日本パノラマ『そして彼女は片目を塞ぐ』
根来佑監督インタヴュー


 摂食障害を克服した監督がそこに見たものは…

Q: 摂食障害者の自助グループを通じて、今回映画に出演された方々と知り合ったようですが、ここはどのような場だったのでしょうか。

NY: そこでは、言いっぱなし、聞きっぱなし、というルールがあって、とにかくひとりひとりが一方的にしゃべって、誰かがしゃべっている間は自分は黙って聞いているというミーティングが1週間に3、4回ありました。家や学校では聞いてもらえない、言えないような話を、お互いにしゃべって聞いてというものです。私が最初にミーティングに参加したのは4年くらい前のことで、摂食障害に関する本を本屋で見つけて、藁をもつかむ気持ちでそこに連絡しました。

Q: 制作期間はどのくらいでしたか。

NY: 人間付き合いから考えると3年くらいは掛かりました。少しづつ仲間をビデオで撮ってはいましたが、だらだらとなってしまい、このまま違うテーマで撮ってしまおうかとも考えましたが、今年の1月に友人が亡くなり、彼女の死が悔しかったので、もっと多くの人に認知して欲しいと思い、それで作品に仕上げました。

Q: 仲間たちと出会った段階で、彼女たちを撮りたいという気持ちはあったのですか。

NY: それは薄くありましたが、おかしなことに私が自助グループに辿り着いた時は、当事者意識が薄く、取材したい気持ちが半分と、もしかしたら私も当事者かもしれないという気持ちが半分あって、私と彼女たちは違うんだみたいな変なプライドがありました。それが半年くらいで崩れ、私は本当に病気だなみたいなことが分かって。
 それに、最初は人にカメラを向けるのが怖く、だからまず自分を撮ろうと思って、自分を撮ってそのビデオを観て、もし共感してくれたり、納得してくれる人がいれば、その人を撮らせて欲しいというのがありました。それで先に短編を3本つくりました。

Q: 彼女たちはそれぞれ育ってきた環境は違いますが、体験したことや、ものの考え方、感じ方がとても似ている部分があると思いましたが。

NY: 私が自助グループに最初に行った時、彼女たちひとりひとりの生い立ちとか今の状況を聞いて、こんなにそっくりな人たちが世の中にいたことをはじめて知って、凄くショックを受けたんです。最初は本当に不思議だなくらいしか思っていませんでしたが、あまりにも酷似している点が随所にあるので、個人的だと思っていたものがいきなり公のものだという認識が生まれてきました。

Q: 同世代の女性として、彼女たちにとても共感を覚えました。

NY: そうですね、多分受けている抑圧というのはやっぱり一様に女の子がこの国に生まれ落ちた瞬間から、あらゆる女性に起こっていることだと思います。同じ影響を受けても、体に出ない人もいれば、出る人もいて。
 現在、摂食障害は高い割合で起こっていますが、ひとりひとりは自分の中から自然に出てきているものだけれども、社会が抱えている問題とかで、時代が生んだ申し子という部分があると思います。私が年数を経て外側から思うのは、ひとりひとりがストライキをやっていたんだな、今もやっている人が沢山いるんだなっていう印象で、問題を外にアピールするためのメッセージなんだと捉えています。
『そして彼女は片目を塞ぐ』の上映は10/6(土)21:00からミューズ1で行われます。

採録・構成 佐藤和代


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ポパイがほうれん草を食べるようなもの
 日本パノラマ『ていちゃんのルーツ』 『35度4分』
田中見和監督インタヴュー



大学生の田中監督が撮った、「踏み込んだ関係」と「踏み込まない関係」

Q: 映画の中で、「親友のていちゃんが在日韓国人である事について、ずっと彼女に何も聞けなかったけれど、カメラがあれば踏み込んで聞けると思った」と、おっしゃっていますが?

TM: ていちゃんから名前を韓国語読みに変えたと聞いて、彼女との関係を客観的に撮りたくなったんです。彼女にいろいろ聞きたいのに、何を怖がっているのかと思った。ポパイがほうれん草を食べて強くなるように、私もカメラがあると強い自分に変身できるので、彼女から話を聞くきっかけとしてカメラを使いました。

Q: ていちゃんを撮った事で、おふたりの関係に変化はありましたか?

TM: 彼女とは、それまで真面目になって話をした事がなかったので、お互い照れながら撮影しました。でも彼女は「聞いてくれて嬉しかった」と言って、完成したビデオを見てすごく喜んでくれました。こんな事を言うのは恥ずかしいけれど、私達は一生友達でいると思います。

Q: 『35度4分』ではガラっと変わって、他人の心の中に踏み込まない関係が描かれていますね。

TM: 私の中では、踏み込んで関係を築きたい人と、踏み込まないで軽く付き合いたい人との2パターンがあるんです。でも踏み込まない自分をずるいと思う気持ちもあって、そこからこの作品が生まれました。

Q: 『35度4分』は、脚本に沿って撮ったのですか?

TM: カメラが小型になってから、いろいろな所に持ち歩いて撮っているので、脚本があった訳ではなく、撮ったものを後でつなぎ合わせて出来た作品です。タイトルに関しては、私は平熱が35度6分と低いのですが、『35度4分』の方が語呂がいいかと思い、このタイトルにしました。

採録・構成 村上由美子


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