摂食障害を克服した監督がそこに見たものは…
Q: 摂食障害者の自助グループを通じて、今回映画に出演された方々と知り合ったようですが、ここはどのような場だったのでしょうか。
NY: そこでは、言いっぱなし、聞きっぱなし、というルールがあって、とにかくひとりひとりが一方的にしゃべって、誰かがしゃべっている間は自分は黙って聞いているというミーティングが1週間に3、4回ありました。家や学校では聞いてもらえない、言えないような話を、お互いにしゃべって聞いてというものです。私が最初にミーティングに参加したのは4年くらい前のことで、摂食障害に関する本を本屋で見つけて、藁をもつかむ気持ちでそこに連絡しました。
Q: 制作期間はどのくらいでしたか。
NY: 人間付き合いから考えると3年くらいは掛かりました。少しづつ仲間をビデオで撮ってはいましたが、だらだらとなってしまい、このまま違うテーマで撮ってしまおうかとも考えましたが、今年の1月に友人が亡くなり、彼女の死が悔しかったので、もっと多くの人に認知して欲しいと思い、それで作品に仕上げました。
Q: 仲間たちと出会った段階で、彼女たちを撮りたいという気持ちはあったのですか。
NY: それは薄くありましたが、おかしなことに私が自助グループに辿り着いた時は、当事者意識が薄く、取材したい気持ちが半分と、もしかしたら私も当事者かもしれないという気持ちが半分あって、私と彼女たちは違うんだみたいな変なプライドがありました。それが半年くらいで崩れ、私は本当に病気だなみたいなことが分かって。
それに、最初は人にカメラを向けるのが怖く、だからまず自分を撮ろうと思って、自分を撮ってそのビデオを観て、もし共感してくれたり、納得してくれる人がいれば、その人を撮らせて欲しいというのがありました。それで先に短編を3本つくりました。
Q: 彼女たちはそれぞれ育ってきた環境は違いますが、体験したことや、ものの考え方、感じ方がとても似ている部分があると思いましたが。
NY: 私が自助グループに最初に行った時、彼女たちひとりひとりの生い立ちとか今の状況を聞いて、こんなにそっくりな人たちが世の中にいたことをはじめて知って、凄くショックを受けたんです。最初は本当に不思議だなくらいしか思っていませんでしたが、あまりにも酷似している点が随所にあるので、個人的だと思っていたものがいきなり公のものだという認識が生まれてきました。
Q: 同世代の女性として、彼女たちにとても共感を覚えました。
NY: そうですね、多分受けている抑圧というのはやっぱり一様に女の子がこの国に生まれ落ちた瞬間から、あらゆる女性に起こっていることだと思います。同じ影響を受けても、体に出ない人もいれば、出る人もいて。
現在、摂食障害は高い割合で起こっていますが、ひとりひとりは自分の中から自然に出てきているものだけれども、社会が抱えている問題とかで、時代が生んだ申し子という部分があると思います。私が年数を経て外側から思うのは、ひとりひとりがストライキをやっていたんだな、今もやっている人が沢山いるんだなっていう印象で、問題を外にアピールするためのメッセージなんだと捉えています。
『そして彼女は片目を塞ぐ』の上映は10/6(土)21:00からミューズ1で行われます。
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