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10月4日(木) no.2



 
ONE CUT
期待に満ちた緊張感が漲る
小川さん!観てますか?
小川紳介に捧げたい
「私も作業工程に出ているので、見て下さい。」
映画祭グッズ売れゆき良好
YIDFF ネットワーク企画上映
『Mardiyem 彼女の人生に起きたこと』

海南友子監督インタヴュー
アジア千波万波スペシャル
ノンプロフィット・フィルムの現在
―新たな文脈を求めて―



ONE CUT

期待に満ちた緊張感が漲る
初日のaz大ホールは、勅使河原宏の追悼上映で幕を開けた。舞台上手には、草月流の生花が飾られている。めったに見られない映画作品に、会場の人々には静かな熱気が……。そして、これからの一週間への、期待に満ちた緊張感が漲っていた。



小川さん!観てますか?
小川さんが生きていたら、新しい映画を作って今映画祭に参加していたと思います。「小川さ〜ん!観てますか?」満山紅柿の上映にさきだち、プロデューサーであり、小川紳介夫人である白石洋子さんは呼びかけた。そして、関係者が登壇して挨拶した。



小川紳介に捧げたい
オープン上映となったことをたいへん光栄に思います。そして、この上映を亡き小川紳介に捧げたい。ただ、ポン監督がみえないことが残念ではありますが。『満山紅柿』というタイトルは彼女がつけたものです。彼女は小川さんの(フィルムに手を入れるという作業に)重さを感じていました。この作品が一つの話題になり、小川紳介の生き方や考え方が再発見されればいいと思います。
菅野健吉(上山名産紅柿の記録映画を作る会 代表)



「私も作業工程に出ているので、見て下さい。」
―今年で七回目を迎えた映画祭のオープニング上映『満山紅柿』の冒頭、小川紳介の"戦友"白石洋子さんの呼びかけで壇上に上がった出演者(「たわしかけ」担当)のこの一言は、映画祭の存在意義を象徴する、おかしくも感動的なものだった。小川紳介が人生をかけて「記録」しようとした"声なき人"の声、"光なき場所"の光。情感ある太鼓と笛の音、誇り高い干し柿のクローズアップ、どこまでもほがらかな人々の顔。会場は笑いに包まれ、観客は映像美、そして"小川紳介"を心ゆくまで堪能した。



映画祭グッズ売れゆき良好
映画祭、最初の上映から。五分入りの客席のメイン会場前では、バッグ・バンダナ・Tシャツなどの映画祭グッズが売られている。おなじみロックス・リーやフィリピンのアニメーターエレン・ラモスのイラスト入りTシャツが好評とのこと。


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真実を伝える事は、私自身の使命感
 YIDFF ネットワーク企画上映『Mardiyem 彼女の人生に起きたこと』
海南友子監督インタヴュー


この映画を通して、監督の伝えたかった事、伝えたい人

一人の元慰安婦でインドネシア政府、日本政府と戦っている女性の心情を追うような構成になっています。またその人を追跡する事から出会った、ほかの元慰安婦の生活も組み込まれています。彼らの立場が自分だった場合を想定して、彼らの気持ちを読み取って下されば嬉しいです。また、観終わったあとも、この問題(他の社会問題も)を意識していてほしい。それから、もう一つの点は、映画の中で説明している第二次世界大戦時の事実です。インドネシアの慰安婦についてはあまり知られていないので、この機会に知ってください。大体のインドネシアの慰安婦問題については網羅しています。 

取材について難しかった点

マルディエムさんは、戦う事をメインとしていたので、第1日目から、慰安婦時代の自分の受けた被害を話してくれました。過ぎた事は本当のことなので、それをちゃんと伝えたい、そしてもう二度とおきないように訴えていきたい、という気持ちが強かったので、マルディエムさんのインタビューでは、真実を聞き出すのは難しくありませんでした。また、被害に遭い、誰からも支援も受けず、暮らしていた他の元慰安婦は、言うのは辛いけど、事実を残さなければいけないと、初めて証言してくれました。しかし、すごく泣いてしまって、どうしようもなくなって、もう思い出したくもないと言った人もいましたが、それほど辛いなら、なおさら聞きたいから、お願いしました。真実を伝える事は、私自身の使命感でもあるし、映像はより多くの人に見てもらえるチャンスだから、いやな証言もしてもらいました。

一人の元慰安婦マルディエムさんに焦点を当てた理由

インドネシアでは、93年から8年間、慰安婦の運動がされてきました。そのなかでも中心人物として活躍していたのが、マルディエムさんでした。彼女は、自分に降りかかった被害を後の世代に伝えていって、二度とないように、インドネシア政府、日本政府に訴えてきました。そういった、背筋の伸びた姿勢がかっこいいと思って、取材させてもらいました。彼女が素晴らしいのは、慰安所に居た時から、(自分は、生き残って、必ずこの事を、今後こんな事がないように訴えていくべきだ)と思っていたことです。50年間も誰にも言えずに黙っていたほうが、もどかしかったかもしれません。

取材をしていて感じた事

インタビューをしていて泣きそうになるのをこらえながらやっていました。
人間の心に辛い思いを残してしまう戦争自体、なくしていくよう努力すべきだと強く感じました。アメリカ同時多発テロ事件後の日本が、当時の何となく戦争を始めてしまった日本と凄く似ている感じがして、ものすごく恐ろしいです。また同じ事を繰り返し、辛い思いを多くの人に与えるのでしょうか? 彼女たちの中の約8割の人が、人を愛する事も出来なくなり、結婚もせず、インドネシア政府からも支援を受けずに、辛い過去を背負って、死んでいくのです。その責任を日本は背負っている事を忘れてはなりません。教科書でもしっかりと明記し、後世に伝えて、二度とこんな形で人の心も身体も、そして人生も台無しにしてはいけないのです。

採録・構成 坂口友美


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アジア千波万波スペシャル
ノンプロフィット・フィルムの現在
―新たな文脈を求めて―


フィルム・メーカーズ・インフォメーション・センター(FMIC)、そして本映画祭で開催されるトークと上映会について、代表の映像作家・末岡一郎氏(SI)と、設立メンバーで美術評論家・映像作家の西村智弘氏(NT)にお話を伺った。


Q: ノンプロフィット・フィルムとはどのようなものですか。

SI: 自主制作的に作られた個人の作品です。営利目的ではなく、作家の自己表出のために作られたいわば純粋芸術ともいうべきもので、流通経路を持つコマーシャルな作品以外を対象とします。

Q: なぜFMICをつくろうと思ったのですか。

SI: 1度上映したフィルムは作家に再上映の意志がなければ、しまいこまれる運命にある。公開された作品は作家の手を離れて社会ないしは世界に帰属するもののはずだが、実際は作家が1人でコントロールしていて広がりを持っていない。情報そのものが閉じこもり、誰が何をいつ作ったかすらわからない。そこで作品の流通に問題があるのではないかという疑問に行き着いたのです。流通経路の整備さえすれば、以前に見た作品にまためぐり合うことができるかもしれない。そんなことからFMIC設立を考えた。

Q: 具体的な活動について教えて下さい。

SI: 見る、作る、参加する、批評するといったことをネット上で展開していきたい。まずはデータベースを作る。手に入る情報から集めてデータベース化してインターネット上で公開し、作家と容易に連絡が取れるようにするなど、ネットの双方向性という利点を活かした運営をしたい。次に映画批評についてだが、メールマガジンで批評活動を展開するなどしていきたい。また制作に関するノウハウについてもよく聞かれることであるからサポートしたいし、すでに活動中の団体との情報交換の場や、海外の団体とお互いの国の作品を紹介しあえる窓口ともしたい。

Q: トークが行われますが、どのような内容になりますか?

SI: 映画発表の困難さというものは、アジア、南米、東欧の国々が等しく抱える問題だと思う。お互いの問題を話し合うことでアーカイブの重要性を確認できるのではないかと考えている。

Q: なぜ実験映画の企画なのですか。

NT: 今回の上映会では、ノンプロフィット・フィルムの中の分り易い1つの枠組みとして実験映画を設定した。実験映画の見せ方の切り口にもいろいろあるが、ここではキュレーションということを問題にしたい。上映会をする時にただ作品を並べるのではなく、見る側に対してある種のとっかかりを与えることが大切である。FMICに情報がたくさん集まり、発信する時にもキュレーションが大切になってくると思う。美術などでは当たり前のことが映画では価値を置かれていないが、いろいろな人がキュレーションし、常に新しい見方を提案していくことで、活性化し、映画史が書き替えられていくはずである。
この後、上映作品と個々の作家について詳しくお話いただき、映画と音楽の関係性、ファウンドフッテージ、著作権の話などにも脱線したが、紙面の都合により割愛せざるを得ません。興味をお持ちの方はぜひ市民会館ホールへ足をお運び下さい。
トークと上映会は10/6(土)午後12:00から市民会館小ホールで行われます。

採録・構成 黒川通子


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