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[インドネシア]

ノカス

Nokas

- インドネシア/2016/インドネシア語、ヘロン語/カラー/Blu-ray/76分

監督、撮影、録音:マヌエル・アルベルト・マイア
編集、製作:シャラフディン・シレガル
音楽:ヤヌー・アリエンドラ
共同製作:ダマル・アルディ
製作会社:Komunitas Film Kupang
提供:Raketti Films

西ティモール、クパン。畑仕事に精を出す青年ノカスは鶏を世話するチィと結婚することが決まっているが、一筋縄ではいかない家どうしの婚姻事情が、幸せ一杯のふたりの前に立ちはだかる。持参金や結婚式の形式など、両家の家長により取り決めがなされるなか、決まったものは仕方がないと腹を括ったノカスは、パワフルなシングルマザーの姉、対岸のスマウ島に住む母とその夫の親族を巻き込みながら、必要なお金を工面し結婚を実現しようと奔走する。



【監督のことば】私が初めてノカスに会ったのは2013年の4月だった。私は当時、土地を失う危機に瀕したコルフアの農民の闘いを記録するという課題に取り組んでいるところだった。ノカスは自分の農場で休んでいた。彼の吸うタバコの煙に包まれながら、私たちは母国について語り、自分の土地に暮らすという、生まれながらの権利について語った。ノカスの地元では、巨大ダム建築のプロジェクトがあり、農民は立ち退きを迫られていた。ノカスは、立ち退きに抵抗する数千人のコルフア農民の一人だった。一説によると、ダムの建設には4600万ドル以上が費やされるという。

 私がノカスに心を惹かれたのは、彼がまだ独身であると知ったときだ。クパンに暮らす独身の若い男性が、自分の土地で働くことを好むのは珍しい。たいていは地元のプールバーにたむろしたり、都会に働きに出たりしている。農民は政府のダム建設プロジェクトによって苦難に直面し、将来への希望を失った。ノカスの人生の選択に、私は大いに興味を持った。

 この勤勉な若者と、彼を取り巻く困難な状況に興味を持った私は、きわめて複雑な彼の家庭生活も知ることとなる。この映画では、ティモールにおける結婚、家族、文化を語るなかで、ノカスが相手方から要求された持参金を用意しようと奮闘し、ついに愛する人と結婚できるまでの物語が作品の軸になっている。つまり、誤解を恐れずに言えば、『ノカス』は現代ティモールの生活を象徴する作品になっている。

 この映画の制作に携わった3年間で、私はたくさんのことを学んだ。登場人物や彼らの文化から学んだだけではない。社会の様々な集団を苦しめる構造的貧困と闘うときに、映画は重要で強力なメディアになるということも学んだのだ。ノカスと彼の家族も映画が持つ力に気づき、長期間にわたる撮影に積極的に協力してくれた。プリプロダクションからポストプロダクション、さらには現在進行中の配給という段階に至るまで、映画を製作するすべての過程が、私にとってとても実りのある、学ぶところの多い体験だった。この旅に参加してくれた友人たちも、きっと同じように感じているだろう。


- マヌエル・アルベルト・マイア

1989年4月17日、現・東ティモールのバリボに生まれる。クパンのヌサ・センダナ大学で学び、教育学で学士号を取得。2011年にクパン・フィルム・コミュニティを設立。2012年、イン・ドックスが開催する初心者向けのドキュメンタリー映画制作ワークショップ、「キックスタート!」に参加。これまでに『Kaos Kupang』(2012)、『Kabar dari Medan』(2014)などの短編ドキュメンタリーを監督。本作は初の長編ドキュメンタリーになる。