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[韓国]

パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ

Bamseom Pirates, Seoul Inferno
밤섬해적단 서울불바다

- 韓国/2017/韓国語/カラー、モノクロ/Blu-ray/119分

監督、脚本、編集:チョン・ユンソク
撮影:ホ・チョルリョン
製作:チョ・ソナ
配給:M-Line Distribution

チャン・ソンゴン(ベース)、クォン・ヨンマン(ドラム)からなるグラインドコアバンド、パムソム海賊団。大学や路上、取り壊される建物、済州島の4.3事件集会で、韓国社会の様々な問題と接点を持ちながら、若者の閉塞感をシャウトする柔軟かつストレートなふたりの若者の姿を捉える。アルバム『ソウル・インフェルノ』の曲と一体化した映画は、ロードムービーのように前進するかに見えたが、2012年、友人のプロデューサーが国家保安法違反の罪で逮捕され……。



【監督のことば】ソウルで流行りのクラブで定期公演するようなバンドとは対照的に、パムソム海賊団が主に演奏を行うのは、さびれた公園や地方の小さな村、立ち退きを強いられた土地や日本の反核デモといった、主流からはおよそかけ離れた場所である。本作は、そのようなパムソム海賊団の巡業を、都市と地方に分断され、都市開発が称賛されるべき経済成長と同じものとみなされがちなこの韓国という国のコンテクストにおいて考察している。しかも、済州島や日本で行われたパムソムのコンサートは、エネルギー問題や安全保障、主権といった政治論争の中心地でもある。かくして彼らの旅のクライマックスは、パムソム海賊団のプロデューサーであり、友人でもあるパク・チャングンが国家保安法違反の嫌疑をかけられ、逮捕されたときに訪れた。パクが逮捕されたことで、もともとの私のプラン――パムソム海賊団の足取りを追うことで韓国の若者文化を探ること――は途方もない見直しを余儀なくされた。デビューアルバムの『ソウル・インフェルノ』は、パクの審理の証拠として使われ、クォンも証人として出廷した。

 現存する最後の共産主義体制が、資本主義体制を敷くその同胞と対峙するこの朝鮮半島には、中立の立場など存在しない。非民主的で抑圧的な、対立を煽るだけの冷戦イデオロギーは、ポスト冷戦時代になってもいまだに鳴り響いている。そうだとしても、パク・チャングンのツイートした「キム・ジョンイルがカー・セックス」という言葉や、パムソム海賊団の『ソウル・インフェルノ』は、時代に鋭く警告を発し、ポスト‐ポスト冷戦時代の幕を開くものとなる。私たちの住む硬直した現代社会に残された断片に目を向けることで、私はそれらを集め、何か新しいものに作り替えようとしているのである。


- チョン・ユンソク

1981年、韓国ソウル生まれ。韓国芸術総合学校より、ヴィジュアルアーツ研究で学士号、ドキュメンタリー映画制作で修士号を取得。アーティスト、映画作家として、アートやドキュメンタリーを通じて、国家や社会の公共性をめぐる批判的な問いを発し続けている。そのアートプロジェクトや短編映画は、2010年バンクーバー映画祭や2012年光州ビエンナーレで展示・上映されている。1990年代に起きた韓国の連続殺人事件を初めて題材とした長編デビュー作『Non-Fiction Diary』(2013)は、2013年釜山国際映画祭メセナ賞、2014年シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭ニュービジョン部門長編ノンフィクション作品賞、2014年ベルリン国際映画祭NETPAC賞など、国内外で多数の賞を獲得した。