English

共通の敵

A Common Enemy

- スペイン、チュニジア/2013/アラビア語、フランス語/カラー/Blu-ray/78分

監督、脚本:ハイム・オテロ・ロマーニ
撮影:イグナシオ・デ・ヴィセンテ
編集:ディアナ・トセード
製作:クリスティーナ・ボデロン、ハイム・オテロ・ロマーニ
提供:ハイム・オテロ・ロマーニ

2011年、チュニジアでベン・アリー政権崩壊の約9ヶ月後に行われた制憲議会選挙を追った作品。23年間の長期政権下では、実質的な自由選挙は行われなかったため、初めての民主的手続きに、政党が続々と名乗りを挙げる。当初、アンチ旧体制の掛け声のもと展開された選挙運動は、徐々に、イスラーム主義か政教分離かの論争に争点を移していく。チュニジアの選挙のなかに、現在の北アフリカ・中東情勢の一端を垣間見ることができる。



-【監督のことば】チュニジアという小さな国では、人々は互いをよく知り、いかなる圧制とも闘うためというだけでなく、より良い社会づくりを目指して価値観や信念を共有するためにも、連帯することを辞さない。

 とはいえ今日のチュニジアは、2つの明白な敵対勢力によって二極化された国家である。我々がこの映画を社会のそれぞれの勢力のメンバーに見せ始めたとき、双方の党派が同様の反応を示した事実に驚かされた。真実を見つめる作風で現実を描き得たことに満足する一方、彼らは相手の党派はきっとこの映画に失望するだろうと警告を発したのである。このことに当初は我が意を得た思いがした。というのも、本作品ではチュニジアの革命後の物語、および危機的状況の最中、我々と生活をともにした人々の物語の真実を描こうと常に意識してきたからである。

 けれども、まだ双方が互いに充分に理解し合っていないことが歴然としたのは、気がかりなことでもあった。敵を作って結束を強めようとする人間の強欲を棄てさせるために、共感を生み出すこと――それこそは本作品の究極の目標である。


- ハイム・オテロ・ロマーニ

1983年、トロント生まれ。2009年、全編インドで撮影したドキュメンタリー『Nano Caste: The New Indian Middle Class』を監督・製作。同作品はロンドンの「We the Peoples Film Festival」で受賞。それ以前には、ショートフィルム『The Box』(2008)およびアーティストTCAP Leviatánのミュージックビデオ「Lluvia」(2008)を監督。最近ではエグゼクティブ・プロデューサーとして長編劇映画『The Vampire in the Hole』(2011)、『Vulnerable』(2011)、『Thirty Lights』(ポストプロダクション段階)などに名を連ねている。