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YIDFF 2013 インターナショナル・コンペティション
パンク・シンドローム
J-P・パッシ 監督インタビュー

愛のある笑い


Q: 知的障がいをもつ人特有の言動を、「面白い」と感じるように編集されているシーンがいくつかありましたね。彼らと多くの時間を過ごした監督たちは、彼らの言動をどのようにして撮影、編集するべきだと思っていましたか?

JP: この映画を制作する上で、私はこの作品は絶対に可笑しい映画にすべきだと確信していました。私は彼らと、本当にたくさんの楽しい時間を過ごしてきたからです。この映画を撮るプロセス自体が面白くてしかたがなく、笑いに満ちていました。けれど、この笑いのシーンを入れるうえで、彼らの両親や親戚たち、そして彼らの世話をしている人たちがこれを見て、どう思うのか、という心配はありました。私たちは誰のことも侮辱したくはなかったのです。こういったテーマを扱った作品を制作する時、よくおこりがちなことは、上からの目線で彼らを撮ってしまうことです。まるで彼らが子どもであるかのように。それは避けたかったのです。彼らと同じレベルで、できるだけ正直な映画を撮りたいと考えていました。

Q: J-P・パッシ監督はユッカ・カルッカイネン監督と、どのように彼らを撮影しようと話し合って撮影を始めたのですか?

JP: もうひとりの監督と、私たちがどの立場に立って彼らのことを撮影するのか、ということはほとんど話し合っていません。なぜなら私たちは彼ら4人に会うやいなや、彼らのことを大好きになったし、幸いなことに、彼らも私たちのことを好いてくれました。本当に近しい関係をすぐ作ることができました。だから私たちは、彼らのグループの一員のように撮影をしていたのです。

Q: 彼らに密着し、監督自身が彼らから受けた影響はありますか?

JP: 彼らは自分たちの感じていることを、話したり、怒鳴ったり、泣いたり、笑ったりといろいろな方法で、きちんと表現します。これは、私たちが彼らから学ばなければならないことだと思います。

 カメラが目の前にあるのに、正直な感情を表現する人はあまりいませんよね。自分が感じていることを素直に表現する彼らは勇敢であると感じ、また同時に、うらやましいと思いました。

Q: 完成した映画を、彼らや彼らの家族に見せた反応はどうでしたか?

JP: 彼らは、この映画が好きで、いい映画だと言ってくれました。最初の上映会の時に、彼らの家族や近しい人たちを呼びましたが、映画の途中で拍手もおこれば、笑いもおこり、掛け声がかかり、終わった後は立ち上がって拍手をしてくれました。彼らのことを笑うのか、彼らとともに笑うのか、という問題だと思っていました。実際、映画を見た人のなかで「この映画はとてもよかった。彼らのことを笑っているのではなく、彼らとともに笑っているからね」と言った人がいるのです。ですが、私自身は、この映画は彼らのことを笑っていると思います。でも愛をもって笑っているのです。どう彼らを笑うのかという、笑いの種類が問題なのです。だから観客にも自由に感じてほしいのです。この映画はこの4人のことも、彼らの家族のことも、私たちは侮辱したりはしていない作品であるということを、わかっていただけると思っています。

(採録・構成:飯田有佳子)

インタビュアー:飯田有佳子、岩田康平/通訳:山之内悦子
写真撮影:鈴木規子/ビデオ撮影:仲田亮/2013-10-11