ジャン=ピエール・デュレ 監督、アンドレア・サンタナ 監督 インタビュー
ブラジル北東部の実情を知る
Q: おふたりの映画には、ある種の普遍性があります。他の恵まれない国ではなく、ブラジルを選んだ理由は?
アンドレア・サンタナ(AS): 私はブラジル人で、私もジャン=ピエールも、私の出身地である北東部が大好きなんです。この映画は、私たちがブラジルで撮った3部作の3作目です。
ジャン=ピエール・デュレ(JPD): あの地方の状況は、私の故郷であるサヴォアに似ています。ああいう地方の人たちは、外界からほとんど顧みられない。そのことを描いた映画を、ずっと作りたかったんです。環境は劣悪で、困難な人生を送っているものの、彼らには、私たちすべてが学ぶべき精神的な強さと意志があります。
Q: それぞれのシーンが非常に自然で、彼らの状況を見極めるというよりは、彼らの世界に招かれたような気分になります。どうやってこのコミュニティと出会い、信頼を築いたのですか?
AS: 私たちの映画を真っ先に見るのは、常に撮影対象となった人たちです。2番目の映画を上映した時、途中立ち寄ったガソリンスタンドで、物乞いをしている男の子に出会いました。彼に身分証明書を持っているか聞いたら、彼は、「僕が持っているのは、自分の人生だけだよ」と答えたんです。私たちは、このジュニアという子どもが、なぜこのように思うのかを探ることにしました。あの地方の人たちは、家族をとても大事にするので、私たちがカップルだから安心してくれたということもあります。
JPD: 到着してすぐに撮影を始めましたが、この映画の趣旨について誤解されることがないよう、じっくり時間をかけなければなりませんでした。彼らは気遣われることがない人たちなので、長く滞在することで、私たちが味方なのだということを、子どもたちや人々に分かってもらいました。私とコカーダは6カ月におよんだ撮影で、父子のように深くて複雑な関係を築きました。
Q: 両親や大人たちは、子どもたちに対して、自分たちが子どもの頃の状況はもっと悪かったと、しばしば言って聞かせます。今後、この状況が良くなると思いますか?
JPD: 悲しいことですが、多額の資金が注入されない限り、良くならないでしょう。あそこはまったくの不毛の地で、子どもたちは、将来に何の希望も抱くことができません。あの地方だけでは解決できないのです。これら恵まれない地域を安定させるには、すべての国からの援助が必要です。彼らの貧困は、私たちの富に直接結びついているのですから。
Q: 映画の中で選挙運動を追っていますが、それはなぜですか?
AS: 選挙運動の真っ只中にいたので、政治家の言葉と、私たちが撮影した人々の言葉を比較させたかったんです。
JPD: 選挙運動は、マスメディアや政治のメタファーです。ブラジルでは、政治的なコミュニケーションには、ずっと拡声機が使われてきました。大きな音が響く中、ソフトな個々の声がかき消されてしまうんです。ふたつの世界は決して相まみえることがありません。
Q: 子どもたちは、映画をどう受け止めましたか?
AS: 1年後に見せたのですが、とても喜んでくれました。映画を見て振り返ることで、自分たちの人生や環境を理解したのです。
JPD: 子どもたちは、映画として記録されて初めて、自分たちの人生には様々な面、美しい面があることに気づきました。この映画によって、彼らの人生を変えることはできません。けれど彼らを理解してもらったり、彼らにアイデンティティをもたらすことはできるのです。
(採録・構成:ラファエル・フゾ)
インタビュアー:ラファエル・フゾ、太愉・山之内・ヘイワード/翻訳:村上由美子
写真撮影:田中可也子/ビデオ撮影:蕭淑憶(シャオ・シューイー)/2009-10-11