私映画から見えるもの |
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PROGRAM D 裸にする
「私」の拠り所として、身体を強く意識した作品群。作り手たちは偶然にも全員が女性で、ほとんど20歳代である。『カルノジカ』と『ははのははもまたそのははもその娘も』は、音響と光と触感を強調した表現から、抽象化された私的物語を提示する。『パリッシュ家』では母親と離縁して久しい父との微妙な対面にテレビ電話が利用される。『ガールフレンド』でのコミュニケーションはカメラの介在や映像制作作業(ナレーション)を通して行なわれる。物質的な私、肉体としての私を自覚することは、他者との距離の計測に深く関係し、同時に現代人の自己像がいかにテクノロジーから切り離せないかを暗示させているかのようだ。
カルノジカ
Carnògica- スイス/2004/ダイアローグなし/カラー/ビデオ/12分
監督、撮影、編集、提供:マルティーナ・ジャコマ
録音、音楽:マルコ・グレコ、マルティーナ・ジャコマ
制作:マルティーナ・ジャコマ、SUPSI-DACD
レントゲン写真や内視鏡など医療機具を使って人間の身体を“解剖”したビデオアート作品。自伝的な体験が映像実験に転換・表出される。
マルティーナ・ジャコマ 1981年、ロカルノ生まれ。2004年、南スイス応用科学大学(SUPSI)、環境設計デザイン学部卒。 |
ははのははもまたそのははもその娘も
Mother of the Mother and Also the Mother of the Mother's Mother, and Her Daughter-
日本/2005/日本語/カラー/ビデオ/11分
監督、脚本、撮影、編集、音楽、提供:瀬戸口未来
美術装飾:萩原志保
フィルム提供:土田恵理子
病床の母親と幼年期に離島で過ごした祖母との記憶を受け入れるため、さまざまな食べ物で作られた肉人形に呪詛を吹き込む。現代の鬼子母神ものがたり。
瀬戸口未来 1980年、鹿児島生まれ。京都造形芸術大学映像舞台芸術学科映像芸術コース卒業。『はらわたのはらわた』(2004)はイメージフォーラム・シネマテーク「ヤング・パースペクティヴ2004」で上映された。 |
パリッシュ家
At the ParishesBei Parish
- スイス/2003/スイス・ドイツ語、他/カラー/ビデオ/30分
監督、脚本:ヤェール・パリッシュ 撮影:クリスティーネ・ムンツ
編集:ギオン=レト・キリアス 録音:ベッティーナ・テニッチョ
音楽:マルセル・ヴェイド 制作、提供:造形大学(チューリッヒ)
幼年時代、共働きの両親は乳母を雇って3人の子どもたちの育児を任せた。大人になった長女は代々の乳母たちを訪ね歩き、今は離婚した父母と弟たちの心傷を問いただしていく。
ヤェール・パリッシュ 1973年生まれ。2003年、チューリッヒの造形大学映画ビデオ学部を卒業。作品歴に『Mensch und Menschine』(1999、短編)、『Ruckkoppelung』(2000、実験映画)、『Mannsbilder』(2000、短編)、『Zeitreise』(2002、ドキュメンタリー)、『Liebesweise』(2002、短編)など。 |
ガールフレンド
Girlfriend- 日本/2005/日本語/カラー/ビデオ/32分
監督、脚本、編集、録音、提供:園部真実子
撮影:園部真実子、川村智美
作者は同級生の友人と毎日を過ごしながら、彼女を「裸にしたい」衝動に突き動かされる。第三者の“あなた”に語りかけるナレーションとカメラの遍在が三角関係を深める。山形の東北芸術工科大学卒業制作。
園部真実子 1982年、札幌生まれ。2000年、東北芸術工科大学情報デザイン学科映像コースに入学し、2003年に卒業。 |