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事務局より

2014-01-18 | 新年のご挨拶

 新年を迎えて早くも2週間が経ちました。皆さんはどんなお正月を過ごされましたか?
 映画祭事務局は昨年の怒濤のような毎日とはうって変わり、凪いだ空気感の中でゆるりと新年のスタートを切りました。気力も体力も体重もすっかり元通り。晴れやかな面持ちで2015年を見据えた開催準備に動き出しています。

 さてさて、そんな映画祭事務局のこれからの動向を少しだけご紹介します。まずは皆さんお待ちかねの『山形国際ドキュメンタリー映画祭2013 記録集』。ゲスト、観客、ボランティア、映画祭に関わった全ての人たちの熱意が結集して生み出された“映画祭”という祝祭空間。その熱気をつかみ取るべく奔走したデイリー・ニュースのボランティアさんたちによる記録写真の数々、そしてゲスト監督たちの作品にかける想いを追ったインタビュー記事など、山形国際ドキュメンタリー映画祭2013を紙面で振り返る格好の資料です。こちらは3月末くらいの発行を目標に鋭意編集中です。

 それからそれから、新年度明けの4月からは通年で若年層への映画・映像教育に力を入れていきます。これまでもワークショップなどで映画・映像教育に取り組んできましたが、今年はより重点的にその活動の幅を広げていきます。詳細については目下検討中ですが、映画・映像を「つくること」「見ること」「見せること」「語ること」を通して、これからの映画・映像表現を担っていくであろう子どもたちと、その魅力を共有していこうと考えています。

 さらにさらに、東北に位置する国際映画祭の使命として、東日本大震災に関連したドキュメンタリー映画のアーカイブプロジェクトを始動します。関係する多くの方々の協力を得ながら、忘れてはならない記憶の数々を後世に残していく活動を推進していきます。

 そしてそして、何といっても山形国際ドキュメンタリー映画祭2015の開催準備です。作品募集開始は晩夏ごろを予定しています。次回も心震わせる作品が多数集まることを期待し、国内外で応募を広く呼びかけていきます。

 もちろん、ドキュメンタリー・ドリームショー山形in東京2014もありますよ! スケジュールの都合でご来形いただけなかった遠方の皆さん、昨年の映画祭の雰囲気を大いに味わえるラインアップの数々をご堪能ください。

 映画祭の開催を基軸として、そこから生まれた映画文化を豊かにする種を今年も大切に育てていきたいと思います。
 本年も山形国際ドキュメンタリー映画祭をよろしくお願いいたします。

(日下部克喜 山形事務局

 


2014-01-18 | 「シマ/島、いま ― キューバ」のその後のNoticiero #0

 新ラテンアメリカ映画祭(Festival Internacional del Nuevo Cine Latinoamericano)開催中のハバナに12月に降り立つ。2013年3月末より一年間、アルゼンチン、メキシコで現地のドキュメンタリー製作や上映状況を探究中の最終地である。年末年始の喧噪もようやく落ち着いたハバナより、少しキューバの映画近況をご報告する。

 2012年の春にMuestra Joven(新人映画祭)というキューバ国内の35歳以下の作家作品のコンペティションを中心にした映画祭にて、日本の若手作家ドキュメンタリー作品を上映して以来のハバナは、当時から始まっていた自営業の解放に伴い、急速にレストランやカフェ、海賊版DVDショップなど個人経営の店舗が増えていて、人々の装いもどこか派手になってきている。逆に持てる人と持てない人の格差が広がってもいるようだが……。 新ラテンアメリカ映画祭には、2009年から4年振りの訪問。映画祭会場や基本のかたちは大きく変わらないが、あちらこちらで35回目ということの気概が感じられる。プログラムや上映数も膨大だが、相変わらず上映プログラムは前日にならないとわからない。そのゆったり感がいい。映画祭のプログラムは、コンペティションは、長編フィクション、短編フィクション、初監督、ドキュメンタリー、アニメーションの5部門。ドキュメンタリー部門だけでも32作品上映。ほかにもラテンアメリカ部門で各ジャンル上映、ドイツや韓国などの各国特集、他映画祭とのコラボレーション、作家特集など上映作品はざっと600本以上。私が観た中では、ペルーのドキュメンタリー(上映フォーマットは35mm!)が非常に興味深かった。

 業界向けのプログラムでは連日、監督らのレクチャーやラテンアメリカ各国の映画製作に関する法律を含む現在の制作状況を報告するレクチャーなどが行われていた。こういったレクチャーは特にキューバの製作者たちにとって重要な意味をもっていた。現在、キューバではICAIC(映画芸術産業庁)の改善を巡る大論争が起こっている。昨年2013年の5月に、ICAICの組織変革担当者と、フリーやインディペンデントの映画製作者たちとのディスカッションが行われ、それから毎月のようにミーティングが行われているとのこと。3ヶ月前に、ICAIC代表も10年以上務めていた前任者からICAICのロベルト・スミ ス(Roberto Smith)氏に替わった。YIDFF 2011に訪れたフェルナンド・ペレス監督も諸事情あり、ICAICの職を辞し昨年から“インディペンデント”作家になった。現在、初の自主製作作品がポストプロダクション中だ。 キューバでは、映画製作に従事するあらゆる業種の仕事はICAICに属し、配給や製作もコントロールされている。ICAICとは無関係に製作されたインディペンデント作品やその製作者は、違法と合法の間で宙づり状態。ペレス監督によると、現在の論議の中心的なテーマは、その宙づり状態の改善を軸に、ICAICの製作支援をインディペンデント作家たちにも還元するような法律の制定、そしてICAICの組織自体のもつ官僚体質の改善などとのこと。こ の作家たちの集まりはG20(ヘ・ヴェインテ)という呼称で、G8やG20とかけられている。そのユーモアがキューバらしい。なにより、G20はあらゆる世代の人々が、どこかの組織が主宰するわけでもなく、後ろ盾があるわけではなく有象無象に集まっていることも、注目に値する。これまでこういった集会は、キューバで成立しづらかった。反体制の集まりと思われがちだからだ。しかし、G20に集まる人々は、個人個人がICAICに反対するということでなく、自分たちの製作とキューバ映画の未来への切実な想いと考えを携えて自発的に参加し、語り合っているのであり、そのことがこの上なく重要に思える。

 とはいえ、新しい文化大臣はあまり改革に積極的な人ではないということも聞き、前途多難ではありそうだが、あらゆる変化の局面をむかえているキューバのいま、そしてこれからにますます目が離せない。実際、映画製作数は上昇し続けていて、今年の4月に開催されるMuestra Jovenの応募数は短長編合わせて、すでに170本とのこと。長編ドキュメンタリー作品もでてきていて、どんな作品が生まれているのか、楽しみにしている。

つづく

(濱治佳 東京事務局・在キューバ