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YIDFF 2009 やまがたと映画
みんなでうたってる
小林香織 監督インタビュー

伝統を受け継いでいくということ


Q: なぜ、ドキュメンタリーを撮ろうと思ったのですか?

KK: 加藤到先生の授業で、作品をたくさん見る授業があったんです。その中に、『チーズとうじ虫』というドキュメンタリー作品がありました。それで、ドキュメンタリーという映画もあるんだと知ったことがきっかけです。私は、ドキュメンタリーだけを撮りたかったわけではないのですが、『チーズとうじ虫』を見ることによって、今回はドキュメンタリーでやろうと決めました。

Q: この作品は、監督の所属していた合唱部の視点から撮影されていますが、撮ろうと思ったきっかけはなんですか?

KK: 私が高校に在籍していた時から、共学化については言われていました。デモ活動も活発に行われていた時期でしたが、高校生の私は、ただ嫌だと思っているだけでした。私は高校の時に合唱部に所属していて、共学化になることで今まで合唱部が築いてきた伝統が、そこで途絶えてしまうかもしれないということも気掛かりだったんです。そのことを、卒業して大学に行ってからも気にかけていました。

 大学にはいり映像を学びはじめ、ドキュメンタリーというジャンルを知ったのと、高校から卒業生宛の、共学化についての手紙が届いたのが大体同じ時期でした。そして、共学になることでの問題について撮りたいと思い、高校にアプローチをかけはじめました。撮影の方法はどうするかと考えた時に、自分の所属していた合唱部をクローズアップしていき、共学化の問題と織り交ぜて撮影していこうと思いました。

Q: 作品の中で、高校の校歌が何回も出てきましたが、それは意図したものですか?

KK: 現場で起きることは、意図していないんです。合唱部の人たちは、校歌をとても大事にしています。集まれば、いつの間にか誰かから歌いだすんです。共学化反対のデモの時に、わざわざ校歌のCDをラジカセで流しはじめたのには驚きました。

Q: 監督のほかにカメラスタッフがいましたが、画を他の人に任せるという不安はありませんでしたか?

KK: スタッフについては、慎重に考えましたが、信頼している仲間だったので、私の意図を分かって撮ってくれるだろうと思いました。なので不安はありませんでした。けれど、私にしか撮れない合唱部の内部の様子もあるので、そういう場合はひとりで撮影に行きました。

Q: 映画を撮るうえで、一番苦労することはなんですか?

KK: 編集です。私は、自分が撮影してきた映像を切ることができないんです。編集中、泣きながら切っていたこともありました。でも、自己満足の作品にならないように、映画の関係者ではない人にもよく分かる作品になるように、編集の途中でも、たくさんの人に見てもらいました。友だちやバイト先の人など信頼できる第三者に、それからもっと冷静になるために、厳しい人にも見てもらいましたた。そして完成した時に、さらに多くの人の意見をもらおうと思い、山形映画祭に応募しました。

Q: これから、どんな作品を撮っていきたいですか?

KK: ドキュメンタリーは、何が何でも撮り続けたいと思いました。今も撮りたい人がいて、手紙を送っていて交渉をしているところです。けれども、ジャンルにとらわれず、これならドキュメンタリー、この方向なら別の手法でというふうに、作品の制作をしていくつもりです。

(採録・構成:伊藤歩)

インタビュアー:伊藤歩、千田浩子
写真撮影:鹿間智秋/ビデオ撮影:千田浩子/2009-09-25 山形にて