藤本幸久 監督、影山あさ子 氏(ナレーター、製作) インタビュー
希望を見い出していくもの
Q: この作品を作ろうと思った動機は何ですか?
藤本幸久(FY): 沖縄にいると、辺野古の米軍基地問題はたいへん大きな問題になっているのです。毎日、新聞にもテレビにも出ています。ところが、沖縄県以外では伝えられていることが本当に少ないのですよ。それは、伝えられることが少ないという言い方よりも、かなりある意図を持って伝えられないようになっていると思ったほうがいいと思います。沖縄の民放局スタッフの人たちは、丁寧にこの問題を取材し、沖縄ではローカルニュースとして放送されています。このニュースを東京キー局に送っているのですが、残念ながら取りあげてくれることはありません。そのような形で、この問題をローカルな問題にしようという意思が、どこかで働いていると思われるのですね。米軍基地問題は、僕たちの近い将来に関わるたいへん大きな問題にもかかわらず、日本の国内では、一地方のひとつの基地だけの問題としてすませられようとしているのです。このようなことをどうにかしなければならないと思ったのが、映画を作る一番強い動機ですね。
Q: 作品の舞台として矢臼別、辺野古、梅香里を選んだのはなぜですか?
影山あさ子: 私は、市民団体の活動の中で、海兵隊の移転訓練や自衛隊の派兵に反対する活動を行っていました。その活動の中で、矢臼別の川瀬氾二さんに出会い、その人間的な魅力に惹かれて映画にしたいと思ったのが、この映画に携わったきっかけでした。同じように活動の中で出会ったのが、辺野古や梅香里の人々だったのです。それぞれ、日本や世界で大事な焦点になっている欠かせない場所のひとつであり、魅力的な人々が住んでいる場所だったからです。
Q: 作品に登場する人々の、どのようなところに惹かれたのでしょうか?
FY: 僕にとってのドキュメンタリーというのは、世の中には困難や矛盾がたくさんあるけれども、そういったものに向き合って少しでも希望を見い出していく、あるいは見い出す努力をしていくことにつながるような映画だと思っています。この作品に出てくるそれぞれの場所で、自分の意思で闘い続けている人たちは美しいと思うし、そういうところを描いていきたいと思っているのですね。映画というものは、それを見ることによってつらい気持ちになるよりは、温かい気持ちになったり、元気が出たりしたほうが絶対いいと思うのです。ですから、ドキュメンタリーも見て良かったと思えるような作品や、ポジティブな気持ちになれる作品が、たくさん作られることを願っていますよ。
Q: 次回作についてお聞かせください。
FY: 『Marines Come Home』という映画を作りたいと思っています。「もう、お家に帰りましょう」という意味ですね。実際に見てみると、海兵隊の隊員って、19歳かそこらのあんちゃんなんですよね。それが、半年か1年訓練されて、戦場に送り込まれているわけです。その結果、心が病んでしまったり、帰ってから社会復帰できなくなったりしている人がたくさんいると聞いています。今度は、実際戦争をやって、人を殺さなければならない立場にいる海兵隊員たちに出会っていくような映画を作っていきたいと思っています。
(採録・構成:影沢吉倫)
インタビュアー:影沢吉倫、奥山奏子
写真撮影:阿部さつき/ビデオ撮影:森山拓郎/ 2005-10-12