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YIDFF 2005 ニュー・ドックス・ジャパン
映画 日本国憲法
ジャン・ユンカーマン 監督インタビュー

矛盾との対峙


Q: アメリカ人である監督が、なぜ日本の憲法を扱った映画を制作することになったのですか?

JJ: 僕が、アメリカ人として日本国憲法についての映画を作ったのは、シグロのプロデューサーである山上徹二郎さんが提案を出したからです。最初に疑問に思ったのが、アメリカ人として僕は、憲法に口を挟むことはできるのかということです。その時、ふたつ考えました。ひとつは、日本国憲法というのは日本国内のことだけではなく、いろんな国際的な関係があるということです。テーマを世界から見て、世界の中の日本国憲法というテーマを取りあげるということで、ひとつ成立したと思います。ふたつ目に、取材を始めるとアメリカとの関わりが深いんですね。憲法を作った当時は、アメリカの占領下だったということ。その後の改憲の動きにも、やはりアメリカの圧力が強くあるんです。1953年に当時の副大統領だったリチャード・ニクソンが来日して、「第9条は過ちだ。変えたほうがいい、変えるべきだ」と演説をしているんですね。その時から、ずっと続いているんですよ。アメリカの圧力が、この5年、10年で強くなってきて、今は、そういう意味ではアメリカの圧力に応えて、憲法を変えようとしているところがありますよね。アメリカが憲法を作ったんだけど、そのアメリカが憲法を変えようとしている。日本がそれに抵抗して、ずっと憲法を変えなかった。矛盾というか、皮肉なのかな。でも、やはりアメリカの圧力があって、日本が自衛隊を作って、拡大し、海外に送ったりする。憲法があるにもかかわらず、軍事的な行動をしているということ。第9条という平和憲法を持ちながら、アメリカの基地が日本各地にあって、日本が間接的にベトナム戦争や、中東の戦争に関わってきているということ。だから、9条という話だけではなくて、いろんな複雑な所に絡みあっていることに、僕は矛盾を感じているんです。

Q: 日本での反応は、監督ご自身が予想していた反応と比較してどうでしたか?

JJ: 僕が思っていたよりは、ずっと広く上映されているんですね。特に自主上映というのがあるので、何回も全国を回って見せたりしています。最初に映画を見せた時には、どれほど関心があるのか疑問に思っていましたが、反応がすごくいいんですね。特に多くの若い人たちが映画を見に来ているんですが、あまりこういう歴史は知らなかったとか、その問題がどういう問題であったとか、自分ではよくわからなかったから、映画を見に来たという感じなんです。だけど、映画を見た後に憲法は、特に9条というのは大事なんだ、守らないといけない、それを広げないといけないという気持ちが強くなる。そういう反応が一般的なんですよね。

Q: 映画を制作する際に、注意したことはありますか?

JJ: 映画の手法としては、ナレーションを使っていないから、インタビューの相手が直接、観客に向かって話している。みんな、ものごとをはっきり言うから、刺激をもらったりするんですね。もうひとつ、観客としては、映画に登場する人は、みんな己の立場からものごとを言っていて、観客も同じように自分の立場があるわけだから、自分で判断する。自分の考えを整理したい、したくなるような感じに陥るんですね。それがうまくいったなと思いますね。

(採録・構成:森山清也)

インタビュアー:森山清也
写真撮影:濱治佳/ビデオ撮影:橋浦太一/ 2005-09-20 東京にて