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YIDFF 2003 インターナショナル・コンペティション
鉄西区
王兵(ワン・ビン) 監督インタビュー

この作品を見る事で、
共通の感情を発見する事ができる


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Q: 鉄西区の人々とカメラとの距離感の独特さが、興味深かったのですが撮影をするにあたって彼等とどのような方法で信頼関係を築いていったのですか?

WB: 私自身は、彼らから信頼を得るために、何か特別な事をしたわけではありません。彼らにとって、私のカメラは特別な存在ではなく、家の中にある時計のように、気にならない存在なのです。それは何故なのかというと、私はこのカメラによって、彼らの生活を捻じ曲げようとか、暴力的に入っていこうとか、ということは一切考えていないからです。彼らの生活の流れのままに、そこにただ寄り添うように入っていったのです。そのような形でいれば、信頼関係を築くということに、そんなに時間を費やすという必要はないと思います。

Q: 監督自身は、この映画をどのように捉えておいでですか?

WB: この作品を見てもらう事によって、共通の感情というのを発見する事ができると思います。というのは、私自身、彼らを今回撮っていますけれども、彼らの生活の真実というものを見せていると同時に、自分の気持ちを見せているという事にもなっている、と考えているからです。自分も彼らの生活を追っかけていると同時に、そこに自分を重ねていたんです。だから、見てくださる人も、見ながら彼らの生活を一所懸命感じてくれると同時に、そこに自分の姿をみたり、あるいはそれをキッカケに考えたりするという経験を、しているのではないでしょうか。そういった事が、私と見てくれている人との間の、精神上の交流に繋がっていると感じます。色々な国に行っていますけれども、彼ら国や境遇は違うといっても、やっぱり普通に暮らしているっていう事に関しては同じで、生きているっていうことは同じですよね。だから、この作品を自分の歩みの中に重ね合わせるように読解していくというのは、どの国の人でも変わらないのではないでしょうか。もちろん映画研究とかしている人は、そういう方面から見るんでしょうけれども。一般の観客にとっては人間それぞれ違いはあれど、本当にベースの部分では違いは無いんじゃないか、ということを感じ取ってもらえたんじゃないかと思います。

Q: 変化する中国の今についてはどうお考えですか?

WB: 確かに中国は、今とてつもない変化に晒されています。そしてその大きな変化というものが、生きる人に多大な圧力をかけているわけです。人間関係が壊れてしまったり、又は非常に変化してしまったり……それに耐えられるかどうか、でもその圧力の大きさの中で、耐えなくちゃならない、生きなくちゃならない。しかし同時にその圧力下の中でこそ物事を考え直して、新しい生き方を模索することで、そこに新しい命っていえるようなものが、生まれるのかもしれないと思っています。

Q: この映画の意義性が、今以上にもっと深く広く受け入れられる時が来ると思いますか?

WB: 私は映画を作るという事に関しては、一定の自信があるし、困難にぶつかっても、乗り越える方法というのを見出してきてはいるんですけれども、これを「見せる」という経験は全然ないんです。ですからそれに関しては、個人的な力ではどうにもならないということはあります。でも、作品は作品として生命を持つと私は思っていて、この作品の生命力は強いと思うんです。だからきっと、そういう時期が来るだろうと思っています。時間がどれだけ掛かるか、わからないですけれども、この『鉄西区』という生命体が、自分で成長していくであろうと今感じています。

(採録・構成:小山大輔)

インタビュアー:小山大輔、御子柴和郎/通訳:秋山珠子
写真撮影:阿部伸吾/ビデオ撮影:松永義行/2003-10-15