やまがたと戦後
後援:東北芸術工科大学、山形大学
戦後70年。戦争は結果であり、過程であり、起点でもある。しかしそのことについて、抽象的に思いを馳せることをできるだけ避け、具体的な手触りをこの山形で探してみようという細やかな試みがこのプログラムである。大きな歴史を漠と捉えず、ヤマガタという地に住む人々の生活や心に刻み込まれていることを、よく見聞きし分かろうとすること。足元から感じることが、戦争という体験を未来に残し伝えることに繋がるのではないか。これらの作品は、市民や学生やテレビ局が、それぞれ独自のスタイルと方法を模索して製作したものである。
無音の叫び声 木村迪夫の牧野村物語
A Voiceless Cry- 日本/2015/日本語/カラー/Blu-ray/122分
監督:原村政樹
山形県上山市牧野に小作人の長男として生れ、太平洋戦争で父を失い、戦後農政に翻弄されながらも、野良で汗を流し、家族を守り、村の暮らしを見つめ、10代から60年以上、日本の農民の声にならない声を詩に紡ぎ続けてきた詩人・木村迪夫の詩と人生を辿る。
YIDFF 2015 クロージング作品
NNNドキュメント '86 セピア色の証言 〜張作霖爆殺事件・秘匿写真〜
Sepia-Tinted Testimony: Hidden Photos of the Huanggutun Incident- 日本/1986/日本語/カラー、モノクロ/DVD/53分
製作:山形放送
藤島町(現在鶴岡市)在住の元陸軍特務機関員が密かに保管していた「張作霖爆殺事件」の歴史的な現場写真61枚を、戦後40余年を経て山形放送が発掘。写真の数奇な運命をさかのぼり、事件の影を引きずる関係者を追跡。隣国の要人暗殺という暴走の背景に迫っていく。日本民間放送連盟賞最優秀賞、ギャラクシー賞受賞。
NNNドキュメント '90 ある戦犯の謝罪 〜土屋元憲兵少尉と中国〜
Aru senpan no shazai--Tsuchiya moto kenpei shoui to chugoku- 日本/1990/日本語/カラー、モノクロ/DVD/27分
製作:山形放送
45年ぶりに中国を訪れた元憲兵の謝罪の旅を追う。上山市の土屋芳雄氏(2001年死去)はかつて満州(現在の中国東北部)チチハルで従軍。終戦までの12年間の軍隊生活で1,917人を検挙、直接・間接的に多くの中国人を殺害した元憲兵の戦中・戦後。「地方の時代映像祭」優秀賞受賞。
NNNドキュメント '93 略奪 〜ある伍長のえん罪〜
Ryakudatsu--Aru gocho no enzai- 日本/1993/日本語/カラー、モノクロ/DVD/27分
製作:山形放送
太平洋戦争末期に中国で略奪を行ったとして、軍法会議で有罪となり服役した元陸軍伍長が、終戦から約半世紀後にえん罪を主張する。彼はかつての戦友や上官、憲兵等を訪ね歩くが、有罪を覆すに足る証言は得られない。一方で、日本軍が中国で行った犯罪的行為の数々が鮮明に浮かび上がる。「地方の時代映像祭」優秀賞受賞。
第19回民教協スペシャル あなた また戦争ですよ 〜残された妻たちの手記〜
Anata mata senso desuyo --Nokosareta tsumatachi no shuki- 日本/2005/日本語/カラー、モノクロ/DVD/46分
製作:山形放送
1998年、山形県遺族会は戦没家族の手記を綴った本を出版。原稿を寄せた36人の妻たちがその後も集まり、毎年文集を出してきた。美しい自然に恵まれた山形の農村地帯。戦争で若くして夫を失った妻たちは年老いたが、その表情は穏やかだ。しかし手記を紐解けば一転……。日本民間放送連盟賞優秀賞、「放送人の会」グランプリ受賞。
子どものころ戦争があった 〜大学生が聴く戦争体験〜
Kodomo no koro senso ga atta--Daigakusei ga kiku senso taiken- 日本/2015/日本語/カラー/Blu-ray/110分
製作:東北芸術工科大学
死と隣り合わせのなか、多感な子ども時代をどのように過ごしたのか? 東北芸術工科大学・映像学科の1年生61名が、太平洋戦争を体験した山形県の人達に「戦時中の楽しかった思い出と生きがい」について尋ねていく。インタビューを通して、日常にひそむ非日常の、過酷な戦争の姿が映し出されていく。