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映画祭2005情報

日本に生きるということ
――境界からの視線



 ここ数年、在日をテーマにした劇映画やドキュメンタリーが非常に目立つようになった。しかし、日本映画の歴史を振り返ると、これまでにも様々な映画に在日は登場し、監督や映画人が活躍してきたことに気付かされる。この特集では映画との関わりを中心に、日本映画のみならず海外の視点から描かれた作品も集め、映画から日本に生きるということを見つめるものである。


特別招待作品

『在日』1997/呉徳洙 

在日50年の歴史を描いた一大叙事詩。それから10年を経た戦後60年に改めて見直す。


A. 最初期の映画人

戦前、日本映画界で活躍し、戦後は韓国、北朝鮮、インドネシアなどで更なる転換期を迎えた4人の映画人にスポットを当てる。

  1. 日夏英太郎=許泳
    『三つの名前を生きた映画人』1997/金載範
    『ニッポン・プレゼンツ』1945
  2. 金井成一=金学成
    『2つの名前を持つ男』2005/田中文人
    『家なき天使』1941/崔寅奎 
  3. 井上莞=李炳宇
    『雪国』1939/石本統吉
    『空の少年兵』1941/井上莞
  4. 宇部敬=金順明
    『基地の子たち』1953/亀井文夫
    『朝鮮の子』1954/荒井英郎、京極高英
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B. ニュース映画の巻

新発掘フィルムを、解放60周年に合わせ韓国映像資料院が復元した『解放ニュース』。8.15独立記念一周年などの貴重な映像。在日メディア(総聯映画製作所)が製作したニュースも紹介する。

『解放ニュース』1945〜47
「日本のニュース」1951〜68
『朝聯ニュース』
『総聯時報』1959〜69
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C. 北朝鮮映画と総聯映画製作所

在日本朝鮮人総聯合会(通称、総聯)が在日同胞を記録するため、1974年に設立した総聯映画製作所。『銀のかんざし』は北朝鮮と合作した劇映画。

『花咲く民族教育』1975
『民族教育を考える』1976
『歴史を繰り返してはならない』2003
『銀のかんざし』1985/高鶴林
『春の雪どけ』1985/林昌範、高鶴林
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D. 60年代の記録

「教育映画」「テレビ映画」「自主映画組織」と、在日を扱う映像媒体が拡がる。大島渚、土本典昭も草創期のテレビ・ドキュメンタリーに取り組んだ。

  1. 教育映画
    『日本の子どもたち』1960/青山通春
    『日本海の歌』1964/山田典吾
  2. テレビ映画
    『忘れられた皇軍』1963/大島渚 
    『市民戦争』1965/土本典昭
  3. 大阪の映画運動
    『大都会の海女』1965/康浩郎
    『1968大阪の夏 反戦の貌』1968/康浩郎

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E. 70年代の記録

NDU(日本ドキュメンタリスト・ユニオン)による70年代初頭の在韓被爆者を記録した貴重な作品。岡本愛彦は日韓関係の暗部を描いた。

  1. 『倭奴(イエノム)へ』1971/NDU
  2. 『世界人民に告ぐ』1977/岡本愛彦
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F. 80年代の記録

日本国家の同化政策が進む中で問われる「本名宣言」、そして外国人登録法の指紋押捺制度に対する拒否運動。この二大ムーブメントを追う。

  1. 『イルム・なまえ 朴秋子さんの本名宣言』1983/滝沢林三
  2. 『指紋押捺拒否』1984/呉徳洙
  3. 『1985川崎 熱い街』1985/渡辺孝明
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G. 90年代の記録

『渡り川』1994/金徳哲(キム・ドッチョル)、森康行

不幸な歴史を乗り越え国境を越えて真の友好を築こうとする未来の若者の姿を描く。

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H. 在日の歴史

在日の歴史を実写フィルムと証言で掘り起こす。

  1. 『解放の日まで』1980/辛基秀
  2. 『隠された爪跡』1983/呉充功
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I. 時代の証言

朝鮮人被爆者、強制連行、強制労働、そして従軍慰安婦などの歴史的問題が、数々の証言によって再検討される。

  1. 『世界の人へ』1981/盛善吉
  2. 『もうひとつのヒロシマ アリランのうた』1987/朴壽南(パク・スナム)
    『アリランのうた オキナワからの証言』1991/朴壽南(パク・スナム)
  3. 『百萬人の身世打鈴』2000/前田憲二
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J. 小川紳介とフィリピィーナ

小川紳介の死により制作が中断した『肘折物語』は、オープニングで特別上映する。

『肘折物語』1992/小川紳介テスト撮影
『メイド・イン・フィリピン』1999/ディツィ・カロリノ、サダナ・ブクサニ
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K. 東京の在日外国人

ムスリムなど、映像民族学の視点から見た東京の人々。

『日暮里 三河島物語』1996/北村皆雄
『ムスリム』1995/弘理子
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L. NDUと台湾人

竹中労が企画し沖縄・台湾にロケした『アジアはひとつ』を新発掘。

『アジアはひとつ』1973/NDU
『出草之歌』2005/井上修
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M. 在日作家の新風

近年の在日作家による作品。金森太郎こと金昇龍はチベットへ旅し、金聖雄は在日一世たちの姿を記録。松江哲明は在日のAV男女優を追った。在日中国人作家、任書剣による北朝鮮紀行からは何が見えるだろう。

『Tibet Tibet』2005版/金森太郎こと金昇龍(キム・スンヨン)
『花はんめ』2004/金聖雄(キム・ソンウン)
『Identity』2004/松江哲明
『北朝鮮の夏休み』2005/任書剣
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N. 韓国映画セレクション

在日を描いた韓国劇映画。

『望郷』1966/金洙容
『あれがソウルの空だ』
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O. 日本映画セレクション

在日の登場する日本の劇映画集。諸事情により未公開に終わった『赤いテンギ』は今回が本邦初上映。

『煉瓦女工』1940/千葉泰樹
『男の顔は履歴書』1966/加藤泰
『赤いテンギ』1979/李學仁
『ガキ帝国』1981/井筒和幸
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シンポジウム

日時:1012日[水]18:30
会場:瑳蔵(さくら)【入場無料】

出席者:呉徳洙、朴壽南、前田憲二 ほか
司会:山根貞男

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