Part 7
沖縄・コロニアルランドスケープ〜非連続の同時代として
移民、第二次世界大戦、アメリカ軍占領、激動の世替わり、沖縄が潜ったトピックは日本というフレームに収まるものではなかった。アメリカが意識され、アジアが意識され、同時に沖縄が意識された。その状況下で、沖縄の声に耳を傾け、沖縄の記憶に目を凝らす外国の映画人たちが少なからずいた。彼らは沖縄の何に関心を向け、どのような映像のビジョンを描いたのか。トランスナショナルな接触と分有から生まれた映像の詩学の再現である。
1 | 植民地のエレジーと占領のクリシェ |
無言の丘
Hill of No Return無言的山丘
- 台湾/1992/北京語、日本語、台湾語/カラー/35mm/165分
監督:王童(ワン・トン) 脚本:呉念眞(ウ−・ニエンジェン)
撮影:楊渭漢(ヤン・ウェーハン)
音楽:陳昇(チェン・ション)、李正帆(リー・ジョンファン)
製作:徐立功(シュー・リーコン)
出演:澎恰恰(ポン・チアチア)、黄品源(フォアン・ピンユエン)、楊貴媚(ヤン・クイメイ)、任長彬(ジェン・チャンピン)
製作会社:中央電影公司 提供:国家電影資料館
1920年代の日本植民地下にある台湾。日本人が経営する金鉱に隣接した村を舞台に、そこに生きる人々の無念としたたかさを、毒と笑いで描く。年季奉公先から逃げ出し金鉱で働く兄弟、2人が間借りする家の未亡人、日本人経営売春宿とそこで下働きをしている琉球少女と、日本人の血が混じった台湾少年、そして村の人々の、それぞれが交差する多彩なエピソードを巧みにまとめ上げている。特に琉球少女を巡るやり取りから、植民地下にある「日本人」「琉球人」「台湾人」の構造を垣間見せ、監督の傑出した人間眼を感じさせる。
八月十五夜の茶屋
The Teahouse of the August Moon-
アメリカ/1956/日本語、英語/カラー/ビデオ(原版:35mm)/124分
監督:ダニエル・マン 脚本:ジョン・パトリック
原作:ヴァーン・スナイダー 撮影:ジョン・アルトン
音楽:ソール・チャップリン 製作:ジャック・カミングス
出演:グレン・フォード、マーロン・ブランド、京マチ子
製作会社:MGM
提供:ワーナー・ホーム・ビデオ
沖縄戦直後、トビキ村で民主主義教育と自立経済再建計画を命じられたアメリカ陸軍軍政班の将校と住民の文化ギャップを軽妙なタッチで描く。コメディーの中にアメリカ占領軍の住民(沖縄)観や逆に沖縄住民の支配者(中国であったり、日本であったり、アメリカであったり)像が描写されている。映画の中の沖縄住民は、いいかげんで少々ずるいが、したたかである。としても、それは長い圧政の歴史を経験してきた住民の一筋縄にはいかない生きる知恵からくるものといえよう。
2 | 沖縄戦の分有 |
そこに光を
Let There Be Light- アメリカ/1946/英語/モノクロ/16mm(原版:35mm)/58分
監督:ジョン・ヒューストン
脚本:ジョン・ヒューストン、チャールズ・カウフマン
撮影:スタンリー・コルテス、ジョージ・スミス、ロイド・フロム、ジョン・ドーラン、ジョゼフ・ジャックマン
提供:ミシガン大学映画ビデオ研究課程ドナルド・ホール図書館
『そこに光を』は、『マルタの鷹』などの作品で知られるジョン・ヒューストンが、第二次大戦前線での体験から戦争神経症に陥った兵士たちが陸軍病院で受ける治療と治癒の過程を描いたドキュメンタリー。沖縄戦の戦闘を体験した兵士は、自分の名前も思い出せないほど重度の記憶喪失となり、カウンセラーは催眠療法を用いる。戦場の具体的な映像が一切ないにもかかわらず、よりリアルな戦場の本質を感じさせる。
レベル5
Level 5- フランス/1996/フランス語、日本語/カラー/35mm/106分
監督、撮影:クリス・マルケル
音楽:ミシェル・クラスナ
出演:カトリーヌ・ベルコジャ、大島渚、他
製作:アナトール・ドーマン、フランソワーズ・ウィドフ
製作会社:レ・フィルム・ド・ラストロフォル、アルゴス・フィルム
提供:アルゴス・フィルム
沖縄戦の記憶の分有をテーマにした、フィクションを交えたドキュメンタリー。ローラは亡き夫が残したコンピュータプログラムの中で最も難易度の高い「レベル5」のゲームを解く。渡嘉敷島の集団自決を体験した金城重明牧師の証言やサイパン島の岬から身を投げる記録フィルム、そして30年間も上映が禁止されたジョン・ヒューストン監督の『そこに光を』の中の沖縄戦で記憶を消失した兵士の映像などがモニター上で開封される。