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[レバノン、フランス、 カタール]

リトル・パレスティナ

Little Palestine, Diary of a Siege
Little Palestine, journal d'un siège

- レバノン、フランス、カタール/2021/アラビア語/カラー/DCP/89分

監督、脚本:アブダッラー・アル=ハティーブ
撮影:アブダッラー・アル=ハティーブ、バーセル・アブドゥラー、ヤヒヤー・ディヤー、ムハンマド・R・M・ハミード、 マジュド・M・A・アルマスリー、ムアイヤド・ザグムート、クサイ・アブー=カーセム
編集:クタイバ・バルハムジー
音響、整音:ピエール・アルマン
製作:ムハンマド・アリー・アタースィ、ジャン=ロラン・シニディ
製作会社:Bidayyat for Audiovisual Arts、Films de Force Majeure
提供、配給:Lightdox  www.lightdox.com

監督自身が出身のシリアのヤルムーク・パレスティナ難民キャンプの2013年〜15年の日常生活を描く。以前はシリアからの援助があったが、道路が封鎖され、食料にも事欠くようになった。母親は高齢者のケアをしているが、飢えて死ぬ者も急増し、炊き出しもわずかで、ゴミを漁る人びとも。爆撃で破壊された家々。子どもたちは元気そうにそれぞれの希望を語るが、ひとり食料の足しに野草を摘む少女も。一時はISISにコントロールされ、その後ロシア軍とシリア軍に制圧され、キャンプの人びとはただキャンプ内を歩くしかない。(YK)



【監督のことば】シリアの革命蜂起とヤルムーク包囲が起きる前、私はカメラとまるで関係のない人生を送っていた。革命がすべてを変え、あらゆる人の社会的役割が政治的な有事によって変容を蒙ることになったのだ。

 そこで始めたのがカメラを廻しその映像をまとめるという作業だったが、しかしそこにおさめられているのが軍に取り囲まれるなかで生きる人びとの物語と現実である以上、それを私だけの個人的な所有物と考えるわけにはいかなかった。この映像は人びとの苦しみを正当に扱う文脈で活用されねばならない――頭のなかにあったのはそんな想いだけで、いつか自分がそれを一篇の映画にまで仕立てるなど夢にも思っていなかった。当時の私には、自分がこの事態を生き延びられるのかもわからなかった。

 やがてヤルムークを出て各地を転々とすることになった私は、どこへ移るにもハードディスクはひとつとして手元に置いておかなかった。没収されたり破壊されたりしないよう、友人たちに託して安全な場所へ運んでもらったのだ。ディスクの中身が確認できて構成台本の執筆と編集の作業を始めたのは、私がようやくドイツにたどり着いてからのことにすぎない。

 私にとってあの場所はもうそこにはない。かの地はすでに破壊され、そこに住む人びとは追放されて帰還することも許されていない。結果として、この映画を作る目的も、ある個別的な場所、もはや存在しないその場所の包囲を解くことではなくなった。この個別的な包囲の経験、ヤルムークの人びとの記憶と苦しみに関わるその経験を、世界のどこでも起こりうるし誰にとっても有意義でありうる普遍的な包囲の経験へと変容させる、そんな映画を作ろうと考えるようになったのである。


- アブダッラー・アル=ハティーブ

1989年、ヤルムーク生まれ。ダマスカス大学で社会学を学び、革命以前は国連活動ボランティアのコーディネーター業務に従事。人道援助協会「Wataad」を友人たちと設立し、とくにヤルムークを中心としたシリア国内の諸地域で多数のプロジェクトを実施する。ヤルムーク難民キャンプについてのいくつかのドキュメンタリーに参加し、なかでも撮影のひとりとして参加した『194. Us Children of the Camp』(2017)は、2017年のヴィジョン・デュ・レエルでプレミア上映された。ドイツの「Peace Green」誌により2014年「ピースメイカー」のひとりに選出され、2016年にはスウェーデンでパー・アンガー人権賞を受賞。現在はドイツに在住し、当地でこのほど難民としての地位が認められた。