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[イラン]

メークアップ・アーティスト

Makeup Artist

- イラン/2021/ペルシャ語/カラー/DCP/76分

監督:ジャファール・ナジャフィ
撮影:フェレイデューン・ナジャフィ
編集:エマード・コダバクシュ
録音:バーラム・ユセフィ
整音:アラシュ・ガセミ
音楽:サッタル・オラキー
製作:シャハーブ・タバタバイ、フェレイデューン・ナジャフィ
提供:ジャファール・ナジャフィ

メークアップ・アーティストの勉強をするため、大学に通うことを条件に結婚したミーナ。しかし夫は、幼い息子の世話や家業を手伝えないなら、新しい妻を探すと言い出す始末。ならば、と息子にとっていい母親となる女性を探したり、夫との喧嘩も駆け引きのようにして粘ったり。その芯の強さに加え、なによりも義母世代の女性の感覚を真摯に受けとめる優しさが光る。夢を叶えるためならばと夫や義母の猛反対にもめげず、あの手この手で道を切り開いて突き進む。次第に周囲も、現実も少しづつ変わっていくかのように見えたのだが……。(WM)



【監督のことば】ある村で夫とともに暮らすひとりの女性を描いたポートレイトである。夫は先祖代々受け継がれてきた伝統を手放さず、彼女は彼女で、もし時間が巻き戻せたら自分にも違った選択があったろうと信じている。年若い母親である彼女は自分の夢が叶うと確信しているわけではないけれど、メークをすることで人びとの顔から伝統の埃を取り除けようとする。夫婦や遊牧民の人びとのあいだで生み出された対話や困難を扱いつつも、ここに見られるのはひとつの愛の光景である。それは観客のこころに、まずはフラストレーション、次いでサスペンスのような感情をもたらす。色彩は痛ましくも、ある種のユーモアも駆使される。そしてそのすべてが汚れなき自然と美しい地形、遊牧民たちの魅力あるヴィジュアルや、被写体の核心にある観客の心を捉える力を背景にして繰り広げられる。このドキュメンタリーは現地の女性を律している指針や文化環境について、当の女性たちや遊牧民族の人たちの会話を通じて言及している。私はときに質問を投げかけ、ときに身を引いてカメラの前の人物たちのやりとりを見守った。この映画では、つねに現実が期待も想像も超えた地点へと観客を連れてゆく。はっきり言おう――これは、険しい雪道を渡り歩きながら生存のためにたえず頭を使ってもがくバクティアリ族、そのひとりひとりの目標達成のための努力と、その途上で男性陣とともに励む女性たちの努力と熱情を描いたドキュメンタリーなのだ。


- ジャファール・ナジャフィ

1986年生まれ。テヘラン芸術大学映画学科に在籍する写真家、研究者、映画作家。これまでいくつかの短編TVドキュメンタリーの演出を手がけつつ、自身初の短編ドキュメンタリー作品『Asho』(2019)が国内外の多くの映画祭で上映され、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭「子どもたちのドキュメンタリー」最高賞のほか、世界各地で数々の賞を受賞した。