〈交差〉
海の生命線 我が南洋群島
Lifeline of the Sea- 日本/1933/日本語/モノクロ/16mm/72分
撮影総指揮:佐伯永輔
撮影:上野行清ほか
編集、解説:青地忠三
線画:村田安司
後援:海軍省
録音、製作会社:横浜シネマ商会
配給:毎日映画社
協力:国立映画アーカイブ
戦前期に大日本帝国海軍の肝いりで製作されたこの国策映画は、かつて日本がオセアニアへの入植を積極的に行っていた事実がありながらも長らく忘れ去られている、あの時代のことを想起させる。かつて南洋群島(南洋諸島委任統治領)と呼ばれ、現在はパラオ共和国、北マリアナ諸島自治連邦区、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国として知られる国や地域における、日本人の入植から太平洋戦争勃発へと、軍国化の一途をたどってゆくまでの過渡期の様子が、本作では描かれている。島々の描写が楽園から戦場へと徐々に変化するにつれ、映画のトーンもまた、ユートピアめいた光景が影を潜め、次第に国粋主義的な熱を帯び始める。YIDFF '91では32分サイレント版が35mmで上映されたが、今回はサウンド付きの完全版を16mmで上映する。
潮の狭間に
Between Tides- 日本、アメリカ/2018/英語、日本語/カラー/デジタル・ファイル/87分
監督、編集:フォックス雅彦
エグゼクティブ・プロデューサー:フォックス文雅、室谷佐和子
製作:フォックス雅彦、チャールズ・フォックス、ダニエル・ロング
提供:フォックス雅彦
第二次世界大戦後、米施政下に置かれ、1968年に日本に返還された小笠原諸島。別名ボニン諸島。17世紀頃から続く欧米諸国や太平洋諸島の人々による入植の歴史によって、多様な出自をもつ島人たち。なかでも返還時に青少年期だった欧米系の住民は、日米の政策に翻弄された。人々の率直な語りから、葛藤を抱えて生きてきた彼/彼女らの人生を紐解き、知られざる小笠原諸島の一面を照射する。
トーキョー・フラ
Tokyo Hula- ハワイ[アメリカ]/2019/英語、日本語/カラー/デジタル・ファイル/72分
監督、製作:リゼット・マリー・フラナリー
撮影:ブライアン・K・ウィルコックス
プロダクション・サウンド・ミキサー:ジョン・マクファデン
編集:李炅
アソシエイト・プロデューサー:朝香初美
エグゼクティブ・プロデューサー:Pacific Islanders in Communications
製作会社:Lehua Films
提供:リゼット・マリー・フラナリー(Lehua Films)
かつて行われた日本本土や沖縄からハワイへの移住は、日本とオセアニアを歴史上はじめて有意義なかたちでつないだ架け橋のひとつだった。日本はミクロネシアを正式に植民地とし、戦時中、他の多くの島々に侵攻したわけだが、日本人が南洋に対し抱くロマンティックな欲望のシンボルは、あくまでハワイの文化であり続けたのである。なかでもフラは、太平洋を越えて日本へと渡り、ハワイアン・フラダンスの講師にとっては、熱帯に逃避したい多くの日本人の欲望を体現する割のいいビジネスとなっている。本作では、フラがこうした矛盾を抱え複雑に絡み合いながら、ホノルルから東京、そして震災後の福島へと海を越えていく経路を辿る。