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YIDFF 2019 春の気配、火薬の匂い:インド北東部より
秋のお話
ピンキー・ブラフマ=チョウドリー 監督インタビュー

社会貢献の活動のなかでメディアを活用できると気づきました


Q: この作品は、99年に山形映画祭で上映されましたが、再び山形で上映された感想をお聞きかせください。また、作品に登場する村や民俗劇は、今どうなっていますか?

PBC: ヤマガタで上映できて光栄です。上映が決まってからは、とてもわくわくしていました。ヤマガタの雰囲気はとても素晴らしいので。作品に出てくるボドの村は、当時とは変わっています。ここ数年よくなっていると思います。97年に映画を作った時は、コミュニティ内でたくさんの暴力が起こっていました。また、セクトによって、いろんなコミュニティに分断されていました。私は映画を作って、今起こっていることはよくないことだということを見せたかったのです。その時に起こっていた政治的な動きは、もともと市民権を守るため、文化を守るためだったはずなのに、暴力が起こることによって、それが壊されてしまうのを見せたかったのです。

 不幸なことに、私はそのコミュニティに戻ることはできませんでした。私の映画は反暴力の映画なのですが、家族や友人たちが、あまりにも暴力がひどいので村に戻ってはいけないと言ったのです。作品に出てくる民俗劇については、撮影時にはすでに衰退していました。市民軍への恐怖から、村の人たちが一緒に集まって練習できなかったのです。映画のために、脚本家を遠くの安全な村に連れて行って、演出して撮影しました。作中にあるような、屋外で夜から夜明けにかけて村の人がずっと見るという形では、残っていません。

Q: この20年間はどんな活動をされていましたか?

PBC: 私はインド北東部のアッサム出身ですが、中央インドでSPSコミュニティメディアというNGOを夫と創設し、プログラムディレクターをしています。インドの中でも最も貧しい先住民族がいるのですが、彼らがコミュニティの中でお互いをよく理解し合うために、いろんな映画を作ってきました。同時に、農民や先住民族の人々に映画を作るトレーニングをして、今は地域のフィルムメーカーのチームが出来ています。過去10年、彼らの作品が国際的な映画祭で上映されていて、そのうちのひとつ『禁止』は、今回のヤマガタの上映作品です。他には、移動シネマで村を回る活動もしています。以前はヒンズー語の古典作品の上映でしたが、最近は私たちがプロデュースした映画を見たいという声が多く、そちらがメインになりました。自分たちの言葉で、自分たちの生活、衰退した昔の農耕方法が映されているのを観てみなさん喜んでいます。

Q: 映像を使って社会貢献を行っているのですね。

PBC: 私は自分のことを、フィルムメーカーというよりも、ソーシャルワーカーと認識しています。長い間、映画を作っていませんでしたが、社会貢献の活動をしているなかで、メディアを活用することができると気づきました。NGOの活動に自分のスキルを活かす形で、映像制作を再開しました。私は、森林へのゴミ廃棄の規制、地産地消の促進の活動も行っています。また、森林火災の抑止など森を守ることを、映画を作って啓発しています。さらに、作った映像をYouTubeで公開しています。英語字幕をつけるのに時間がかかっていて、すぐに配信できていませんが。私たちの活動は大きな可能性を秘めています。

(構成:猪谷美夏)

インタビュアー:猪谷美夏、森崎花/通訳:冨田香里、松下由美
写真撮影:石塚志乃/ビデオ撮影:菅原真由/2019-10-12