田倧源(ティエン・ゾンユエン) 氏(助監督)、廖修慧(リァオ・シウフイ) 氏(製作) インタビュー
出演者たちがアドリブですすめていくスタイル
Q: 最初、出演者が過酷な生活から逃げ出したと話しているのに、あまり辛そうではなく不思議に感じましたが、ラストシーンで現状ではないと気づきました。この映画は外国人労働者のワークショップからうまれた作品とのことですが、どういうものだったのですか?
田倧源(TZ): 台湾では、外国人労働者を捕まえたというニュースがとても多く、警察が彼らを捕まえる方法が、観光客に扮したりして、映画のようなんです。それを、映画にしたいと思いました。どのように映画にしようかと考え、本人たちの実体験や、見聞きしたことから脚本をつくろうと思ったのが、ワークショップを始めたきっかけです。
廖修慧(LH): まず私たちは映画の出演者を集めるため、週末に海外からの労働者が集まる公園で、たくさんの人に声をかけました。そこで映画に興味を持ってくれて、休日が同じで週末に集まることができる人に参加してもらいました。その人たちとワークショップを行うのですが、最初にそれぞれ自己紹介をしてもらい、慣れてきた時点で、ワークショップのテーマ「逃げてきた人たち」という設定を伝えました。
TZ: ワークショップに参加してもらったとき、彼らには自分に役名を付けてもらい、あなたが逃げ出すとしたらという前提を作り、自分なりのキャラクターを作ってもらいました。そうすると、別人を設定しているので、生活上の困難なことを話せるようになると考えました。彼らの話は、本当に自分自身のことかもしれないし、友だちから聞いた話やニュースで見た話もかもしれません。
Q: 女性が急に料理を作りだすシーンは、彼らのアドリブだったのですか?
LH: 食事のシーンですが、あの女性はインドネシアに戻りレストランをやる夢を、ワークショップで語っていました。現在は家政婦が仕事で、料理が得意だと話していたので、料理をしてもらいました。
TZ: 撮影は、廃工場にセットを組み、その外にテーブルを並べ、ホワイトボードを置き、どういうふうに撮るかと話していきます。次に誰が登場と監督が書き、そこで彼らはセットに入り演技をはじめ、彼ら自身ですすめていくスタイルでした。私たちはインドネシア語がわからないので、撮影中は彼らが何を話しているかまったく理解できず、全部終わってから彼ら自身がカットをかけることもありました。
Q: 映画のなかで、飛行機の音として轟音が聞こえますが、どういう効果を狙って使われているのでしょう?
TZ: あそこの近くに列車が走っていて、実際は列車の音です。その音がどうしても入ってしまい、悩んでいたんですが、彼らがアドリブで飛行機の音だと言ったんですね。これは上手い処理のしかただと思って編集でそれを残しました。ただ、意図的に音を入れた部分もあります。この作品は、人が部屋にどんどん入ってくるという非常に単純な構成です。どうやってリズムをつくるかが重要でなので、音を入れることで組み立てることを考えました。
Q: 出演者の人たちは、完成した映画を見られたんですか?
TZ: 彼らはまだ見ていません。撮影が終わったのは2017年の夏ですが、あまりにアドリブが多く編集に1年かかりました。今年の11月、台南で開催される映画祭での上映が決まったので、そこで彼らと一緒に見られると思います。
(構成:楠瀬かおり)
インタビュアー:楠瀬かおり、八木ひろ子/通訳:中山大樹
写真撮影:永山桃/ビデオ撮影:永山桃/2019-10-12