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YIDFF 2017 アジア千波万波
夜明けの夢
メヘルダード・オスコウイ 監督インタビュー

閉鎖された場所で生きる少女たちの、本当の姿


Q: 『夜明けの夢』で描かれている少女たちは、みな何かしらの罪や痛みを抱えています。しかし、彼女たちの本質は普通の少女たちと変わりなく、むしろ周りの環境が、彼女たちの「罪」へとつながっているのではないかと感じました。監督はどうお考えですか?

MO: そのとおりです。おそらく世間の人々は、罪を犯した少女たちが、見た目も、考え方も、振る舞いも、普通の女の子と違うと思っています。私自身、映画を撮る前はそうでした。しかし撮影が始まり、彼女たちと実際に会って話をしてみると、私の娘と何も変わりませんでした。それに気がついたとき、映画を観ている人たちに、彼女たちの本当の顔を見せなければならない、という重い責任を感じたんです。そして、彼女たちの物語は、イランだけのものではないと考えています。このような女の子は、世界中どこにでもいるはずです。

Q: なぜ、更生社会復帰施設の少女たちに焦点を当て、映画を作ったのですか?

MO: 理由はふたつあります。ひとつは、彼女たちにも青春時代があるというところを撮りたかったんです。私は、15歳のときに父親が破産したため、とても貧しい青春時代を送りました。自殺未遂もしました。なにも悪いことをしていないのに、ただお金がないだけで、なぜ誰も私たち家族をわかろうとしないのかと、ずっと考えていました。だからこそ私はそのとき、将来どんな仕事をしていても、社会に耳を傾けてもらえない人たちのかわりに、声を届けようと決めたんです。

 ふたつめの理由は刑務所です。私の父と祖父は理不尽な理由で刑務所に入れられ、酷い拷問を受け、人生を狂わされました。私はそんなふたりを知っていたので、閉鎖されたところで過ごすこと、長い間待つこと、我慢をするということは、どういうことなのかをずっと考えていました。今作の彼女たちは、青春時代を閉鎖された場所で過ごしています。それはどんな気持ちなのか考えなければいけないと思い、この映画を撮りました。

Q: 監督は、この映画を観た人たちが、彼女たちに対してどのように態度を変えることを願っていますか?

MO: 今の社会は、急速に社会自体を破壊しようとしていると思います。ですから、私たちひとりひとりが責任を感じなくてはなりません。映画を撮る人間としては、国や政府に特に期待はしていません。私たちひとりひとりが、自分や家族以外の人のことも考えていかなくてはならないのです。たとえ、社会や政府にとっては小さな問題でも、ひとつひとつの問題が増えていくと大きくなってしまいます。どんなに問題が小さくても、気をつけて誰かが見て動き出せば、広がらずに終わるのではないかと思います。

Q: 監督は今後も、このようなテーマで映画を撮り続けていくのですか?

MO: 現在、刑務所に関する映画を2本撮っていますが、これらを撮り終わったら、おそらくこのシリーズは終わります。このような映画を撮ったことは、自分自身への救いにもなっているのではないかと思っています。次の作品も、また山形国際ドキュメンタリー映画で上映されることを願っています。

(構成:羽田愛理)

インタビュアー:羽田愛理、安部静香/通訳:高田フルーグ
写真撮影:薩佐貴博/ビデオ撮影:大川晃弘/2017-10-07