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YIDFF 2015 やまがたと映画
戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-02【暗黒奇譚! 蛇女の怪】
白石晃士 監督インタビュー

新しさへの試み


Q: 冒頭から投稿者のビデオ映像が続くので、このまま投稿者映像だけで映画が終わってしまうのではないかと思いました。投稿者のビデオ映像が映画の約半分を占める、そのねらいはどのようなものだったのでしょうか?

SK: 常に、新鮮なものを観てもらい、新鮮に楽しんでもらいたいという気持ちがあります。そこから投稿映像でいきなり始まり、投稿映像がずっと続くという、今まで「コワすぎ!」シリーズではしていなかった構成に取り組みました。お約束ごとの安心感を待っている人にとっては、嫌な始まりかたかもしれませんが、違う面白さを見出してくれたらいいと思います。

Q: お約束の安心感よりは、何が起こるか分からない不安を求めたということでしょうか?

SK: お約束をあまり取り入れたくない、というところはあります。大枠ではお約束をしつつも、基本的には常にタブーを破りたいので、こういう構成にしました。あと、この作品は少し映画的な作りをしてみようと思いました。なので、他の「コワすぎ!」シリーズよりもテロップを少なくしたりしています。冒頭から投稿映像で始まり、説明もなくテロップもなく、撮りっぱなしの映像が続きます。優しくない構成、乱暴な見せかたですが、非常に映画的な、説明をせずに考えてもらう、想像してもらう、という楽しませかたです。「コワすぎ!」に安心した楽しみを見出している人に、そうはいかないぞと冷や水を浴びせかけつつ、そこに面白さを見出してもらいたいと思い作りました。

Q: 映画的といいますのは?

SK: 集中して観ないと、よく分からないということです。たとえば、男の子と女の子とのシーンでは、言葉の外側にあるものを、表情との組み合わせで表わしているので、やり取りをつぶさにみないと、その感情がどういうものなのかよくわからないと思います。言っていることだけとか、何となくシーンの概要を受け取るだけだと、今ひとつ本質的なところを楽しめないところがあります。

Q: 今回、今までにない、恋愛に主題を置いているように見うけられます。恋愛を主軸としたわけは?

SK: 構成と同じように、今まで扱っていないもののほうが新鮮な面白みがあると思ったのです。まだ、恋愛を中心に置いたもの、心情まで踏み込んだものは、あまりなかったと思います。『FILE-02』では恋が絡んでいるのですが、恋という事象そのものを描こうとするものは制作していなかったので、今回は恋愛ものにしてみようと思いました。投稿者である桜井が、工藤ディレクターと対になるもうひとりの主人公です。桜井は、漫画でいうところのキャラクターを説明する役にあたります。まずは投稿者がいて、工藤が投稿者に働きかける。そういった関係性で描いてみると他の「コワすぎ!」とも違うものになるかと思いました。

 恋愛ネタにするからには、美男美女の恋物語にしてもありきたりすぎて面白くないし、非現実的だと思ったので、女の子のほうは美しく、男のほうは冴えない役にしました。また、年齢設定をおじさんにしたほうが、気持ち悪さも痛々しさもあるので、おじさんと若い少女の恋の物語としました。

(採録・構成:高橋明日香)

インタビュアー:高橋明日香、田中峰正
写真撮影:平井萌菜/ビデオ撮影:岩田康平/2015-10-12