郭達俊(クォック・タッチュン) 監督、江瓊珠(コン・キンチュー) 監督 インタビュー
雨傘運動は、“正に革命”だった
Q: 老若男女たくさんの人がデモに参加されている状況は、政府の圧力に対する人々の心の叫びだと思いました。「雨傘革命」を撮影されたいきさつをうかがえますか?
郭達俊(KT): 2013年に、大学で法律を教える戴耀廷教授が、セントラル(金融中心街)を占拠することで経済に圧力をかけ、候補者を市民が選出する普通選挙を要求し、政府に認めさせようとする文章を発表されました。まずは、それに驚いたことがきっかけでした。法律を守るべき法律家が、非合法な手段を民衆に呼びかけるというのは、香港はそこまでしなければいけない状況にきているのかと思いました。
江瓊珠(KK): それと、私たちはもともと報道記者なので、以前から社会運動をする人たちとも知りあいで、社会的な問題にも敏感でした。これは香港にとって重要な問題なので、2人で映画にしようとなりました。
今までにも、香港では社会運動がありましたが、参加する層は庶民が多かったんです。私たちが重要と思ったのは、今回は教授が呼びかけたことで、今までとは違った影響力を持つ人たちが参加し、違った展開をしたことです。
Q: 今回の雨傘革命は、国内ではどのように見られていたのでしょう?
KT: ある大学の調査によると、今回の雨傘革命に参加した総数は、およそ120万人くらいだろうと計算されています。香港の人口が750万人くらいですから、かなりの人が参加したことになり、民主化を要求する人が多かったということだと思います。
Q: 題名の『革命まで』というのは、どういった意味なのですか?
KK: 中国語の題名では「まるで革命」「ほぼ革命」という意味になるんです。これから革命が起こるであろう、まだ始まっていないという意味と、当時の状況が、本当の革命につながると感じさせるほどのものだったという、両方の意味をこめています。現場で若者たちの状況を見ていると、正に革命だなぁと思いました。
Q: 今回の大きなデモの中で、主体になる人物はどのように決められたのですか?
KK: まずは、運動に深く関わる人を主体にしました。そして、いろんなタイプの世代の違う人たちを、多面的に描こうと考えました。
Q: 映画の中で「中国人が」と演説している人に、「香港人だ」という聴衆の声がかかる場面がありましたが、現在でもそういう意識の人は多いのですか?
KT: 世代や、考え方によっても違いますが、若い人は香港人としてのアイデンティティが高まっているので、中国との関係がより遠いと考える人も多いです。昔は香港人の多くが中国からの移民だったので、何らかの形で中国とのつながりをもっていました。今は香港生まれの香港人も増え、独自の文化を持っていて、中国とは関係ないんだと思っている人も多いです。中には、かつてはイギリスの植民地だったけれど、今は中国の植民地だという人もいます。
KK: 私自身は、もともと中国大陸には良いイメージを持っていて、希望も感じていたんです。というのも70〜80年代は、中国との関係も比較的良好だったからです。ところが今回の運動を通じて、改めて中国を見たわけです。こういう香港での人々の意見によって、中国共産党がどれくらい変わってくれるだろうか、ということを期待していたんですけれど、結果的にはまったく何ら変化はなかったわけで、非常に失望させられました。
(採録・構成:楠瀬かおり)
インタビュアー:楠瀬かおり、佐藤寛朗/通訳:中山大樹
写真撮影:山根裕之/ビデオ撮影:川島翔一朗/2015-10-13