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YIDFF 2013 アジア千波万波
咲きこぼれる夏
ノ・ウンジ 監督、コ・ユジョン 監督インタビュー

人を愛する難しさ


Q: 極めて珍しい題材に興味が湧いて、拝見させていただきました。

コ・ユジョン(GU): この映画のスタートはガブリエルさんから彼氏ができたという連絡をもらったことです。これからふたりの甘いロマンスが始まるんだと思いました。私たちは初めはそれを撮ろうと思っていたのですが、深く覗き込んでみると、各自の生き方の違い、ふたりが抱えている問題が浮き彫りになり始めました。そしてふたりが様々な問題にぶつかったり、衝突したり、関係を保つために苦しんでいる姿などを、ありのままに映画に収めることになりました。ふたりがどんなふうに愛し合ってきたのか、その関係をどのように続けていったのかということが重要なポイントになっていますし、映画にとっても、すごくいい題材だったと思います。

Q: はじめの構想から作品の完成まで、どのような変化があったのですか?

ノ・ウンジ(RE): まず私たちは、ガブリエルさんの人生を追ってみたいという考えから撮影を始めました。この映画は一見「愛」がテーマに思われると思いますが、見ていくうちに、それに終始しているわけではないことがわかると思います。特に描きたいと思ったのは、「ドゥヨルさんがなぜ屋上部屋に馴染めなかったのか」です。彼のことを理解しなくてはいけないと考えるうちに、彼の変化を追っていくような構成に変わっていきました。彼がどのようなアイデンティティを持つかが、映画にとってもふたりの関係にとっても重要なことだったと思います。

Q: タイトルについて、『咲きこぼれる夏』には、ガブリエルさんとドゥヨルさんふたりの思いが表現されているのではと思ったのですが……。

RE: 韓国語のタイトルとは随分違いますね。韓国語の題は「屋上部屋の熱気」という意味です。咲きこぼれるには、もちろん花が咲くという意味もありますが、温かい雰囲気や空気が広がっていくという意味もあると思います。つまり『咲きこぼれる夏』は、もともとは「熱気」で表現されるように、この映画は非常に情熱的なふたりの色濃い時間を描いているということを意味しているのだと思います。

Q: 映画から、お互いが必要でも、一緒にいられないもどかしさを感じました。カタログに載っている「愛し合うことができるか? 一緒にいられるか? また始めることができるか?」という問いに、監督なりの答えがあればお聞かせください。

RE: この3つの質問は、撮影中に私たちの頭に常にあったものでした。彼らふたりは、性格も人柄もまったく違いますよね。だから顔を合わせるたびに喧嘩もよくしますし、おそらく相容れないところがあるのだと思います。そういうこともあって、撮影中はこの3つの質問を、このふたりの間のこととして考えていました。しかし撮影が終わってから考えると、この質問は、各自がまた誰かを愛せるのか、それぞれが、また新しい人生を始められるのかというふうに変わったように思います。特にドゥヨルさんには、この映画に出たことがいい影響を与えたように思います。友人として見ても、彼は以前よりも自分について悩んだり、考えたりするようになったように感じています。

GU: ふたりの生活を追ってみて、色々なことを考えましたが、撮影が終わってからもまだこの質問は存在し続けています。本人たちもこの映画を見て、自分のことを振り返るようになりましたし、この3つの質問を抱えながら人生とは何かを考えていくのではないかと思っています。

(採録・構成:西山鮎佳)

インタビュアー:西山鮎佳、山崎栞/通訳:根本理恵
写真撮影:楠瀬かおり/ビデオ撮影:仲田亮/2013-10-13