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YIDFF 2011 回到一圏:日台ドキュメンタリーの12年後
チョコラ!放課後』『自転車
小林茂 監督インタビュー

生きるって、楽しいんだぜっ!


Q: 子どもたちの表情が大変豊かで、作品を通して喜怒哀楽を体験できました。ところで、どういうきっかけでケニアの子どもたちに焦点を当てたのですか?

KS: 話せば長いのですが、1994年に福島のあるNGO団体から、ウガンダの子どもたちの写真取材をしてくれないかという依頼がありました。その時、担当の方から「写真はひとりで立ち向かわなきゃならない。久しぶりに自分ひとりで向き合ってみないか」と言われて。そうして行ったアフリカで、松下照美さん(テルさん)と初めて出会いました。彼女は現地で子どもたちのケアボランティアの仕事をして、その後、1996年からケニアに永住し、NGO施設「モヨ・チルドレン・センター」を設立しました。10年たった2005年に会った時「コバさん(小林監督)、子どもたちの今を残してほしい」と頼まれました。僕は「テルさん、早く行こう!」と言いました。この時、すでに腎不全であることがわかっていて、人工透析も近い状況でした。透析を受けていない今じゃないとケニアには行けない、時間がないと思って。だから、迷いはなかった。それで、吉田泰三さん(ゾウさん)にカメラをお願いしてケニアに行ったんです。あと、僕はね、子どもが食卓でお祈りするシーンが好きなんです。その祈りの中で「コバの病気が良くなりますように」と祈っていたことを知ったのは、1年後に字幕が付いてからでした。この時、純粋に子どもたちの世界を描けばいいんだ、社会構造の部分はすっぱりと落としていこうっていう決心がついたんですね。

Q: 印象的だった出来事を教えてください。

KS: ケニアの町の中で、日本人がストリートの子どもたちの中に混じって撮影するって、難しいことです。だから、撮影する前に僕の存在をみんなに知ってもらって、僕もどんな町なのかを知ることから始めました。そして約2カ月後、いざ撮影をしようとテルさんや子どもたちを集めて、この映画の意味と、明日からすべてを晒してほしいと説明して撮影を始めました。でも、いざ始めてみると、子どもたちは都合の悪いところまで写されるもんだから、やめてほしいとお願いしてきたんですよ。僕は悩みました。でも、撮影もうまくいってなかったし、僕自身もリフレッシュの必要性を感じていたから、「わかった、撮影を止める」って彼らに宣言して、改めてケニア政府の許可を取ることにしました。許可がおりるまでの10日間、それぞれが好きに行動したんだけど、その10日間でゾウさんは映像に“らしさ”を取り戻したし、許可を取ったことで子どもたちも拒否する理由が無くなったわけ。こうやって、中から撮るために溶け込んでいく過程は良かったですね。

Q: 子どもたちにこの作品は見せましたか?

KS: 僕は、帰ってきてすぐに人工透析を始めてしまったから、簡単には行けない状態になってしまったんですね。ようやくケニアで子どもたちに見せることができたのは、2010年の秋でした。子どもたちは、といっても時間が経っていたからもう大人なんだけど、ゲラゲラ笑いながら見てました。見終わった後、ある子が「見ていて辛かった。どうやって生きていけばいいかわからなかったんだ。今は(結婚して)家族ができて幸せだと思う。でも、そういう昔の気持ちを忘れてはいけないと思った」と言いました。思わず、涙が出ました。

(採録・構成:野村征宏)

インタビュアー:野村征宏、佐藤寛朗
写真撮影:楠瀬かおり/ビデオ撮影:小林李々子/2011-10-12