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YIDFF 2011 回到一圏:日台ドキュメンタリーの12年後
青春ララ隊I Love (080)
楊力州(ヤン・リージョウ) 監督インタビュー

高齢者と共に生きるということ


Q: 作品を観た後、もっと1日1日を大切にして、今しかできないことを精一杯やろうと思いました。また私たち若者は、1分1秒を懸命に生きなければ、チアリーダーの方々に失礼だとも感じました。このチアリーダーの方々とは、どのようにして出会ったのですか?

YL: 私はこの作品の前に、もう1本高齢者をテーマにした作品を撮っています。それはアルツハイマー病にかかっている養老院にいる人たちを題材にしたものです。この作品は劇場公開されました。台湾では、ドキュメンタリー映画が劇場公開されることがよくあります。この作品はそれなりの反響がありました。そして今度は逆にアルツハイマー病とは対極にある老人の作品を撮りたいと思いました。台湾ではドキュメンタリーが劇場公開されると、それがきっかけで大きな議論が起こるという傾向があります。だからアルツハイマー病の作品の公開を通して、一方で老人=病気というイメージが固定化されることを危惧しました。健康に生きている老人を撮りたいとずっと考えていたとき、友だちが高雄にいておもしろい老人たちがいる、と教えてくれました。アメリカのチアリーディングで短いスカートをはいて踊っていると聞き、会いに行きました。高雄は南のほうにあり暑いからか、そこの人々は情熱的で親切です。撮影期間は1年におよび、その間に私には子どもが生まれました。台湾の習慣で、子どもが生まれると生後1カ月に特別なごちそうを食べます。通常は出来合いのものを買いますが、その時にチアリーダーの人たちが手作りをしてくれました。それぐらい、彼らとは単に撮る側と被写体という関係ではなくなり、あたかも祖父母と孫のような関係になりました。

Q: 一番印象に残っているメンバーは誰ですか?

YL: 美子さんです。彼女は撮影の途中でガンになり練習に来られなくなりました。闘病中ということで撮影も遠慮していました。そんな中、チアリーダーの発表の時に車いすで来て仲間たちを励ましました。この時深い印象を持ちました。美子さんが励ました後、今度は逆に仲間たちが彼女を取り囲んで、病気に打ち勝つように励ましました。その時に思ったのは、お年寄りはこのようにして誰しもがお互いを応援し、自分のことを応援してくれる人を求めているということです。彼らはそれをお互いにやっています。さらに考えると、このようにして撮影していること自体も、彼女たちを応援しているということに気づきました。さらにそれを見てくれる人がいると、観客は彼女たちを応援することになります。このように思い至ったと同時に、非常に憤りも感じました。なぜかというと、彼女たちは基本的に老人が老人を応援し合っているわけで、そこに若い人たちの影がまったく見当たらないからです。この老人たちは台湾の成長の過程の中で、ずっと下の世代を応援してがんばってきてくれた。でも今彼らが老人になった時に逆に若い人たちが老人たちを応援しないことに非常に憤りを覚えました。

Q: 指導者の方は踊りはもちろん、精神的にも重要な役割を果たしていると思いますが、どのように感じていますか?

YL: 指導者はとても重要な存在で、私は太陽だと思っています。みんなの中心にいて、老人たちはその周りを回っているみたいなイメージがあります。とても優しくて情熱があります。もちろん老人たちは彼女を信頼していますが、その子どもたちも、この指導者なら自分の両親がもっと長く健康でいられるのではないかと信頼をよせています。熱すぎず静かに穏やかにやるべきことを遂行する人です。

(採録・構成:大沼文香)

インタビュアー:大沼文香、桝谷頌子/通訳:秋山珠子
写真撮影:二瓶知美/ビデオ撮影:慶野優太郎/2011-10-07