大西健児 監督、馬渕徹 監督インタビュー
8ミリフィルムという文化
Q: 8ミリフィルムで撮影をする魅力は?
馬渕徹(MT): 自由な感じがするんですよね。本当は、音も録れないし、撮った映像をすぐ見られるわけでもないし、制約のあるメディアですが。ずっと写真の畑でやってきて、これまでに表現されてきたことを知れば知るほど、ああ、あれもやられてる、これもやられてるで、窮屈な思いになることがありました。けれども、8ミリや映画の世界はほとんど知らなかったから、知らない強みもあり、気楽に入れました。あとは、フィルムの魅力というのが確実にあります。自分もずっと写真はフィルムでやってきましたが、単純に撮るだけでも、自分で現像したものを触っているのも楽しいです。
大西健児(OK): デジタルなど、より便利で安いものを知ったから、8ミリを不便に感じたり、高いな、なんて錯覚するんだけれども、やろうと思えばやれないわけじゃない。20年以上前に製造中止になった、ほとんどジャンク品のような玩具が、最低限、光を拾って、フィルムに結んでくれる。それだけできれば、映画ってできるんだっていう。描きたいものが無限大に描けていく魅力はあります。ただ、8ミリだから特殊っていうわけじゃなくて、デジカメを使っても一緒です。
Q: 上映会では、大西監督自ら映写機を操作されていました。それもフィルム映画の醍醐味でしょうか?
OK: 『銀鉛画報会』という映画は、ひとりひとりの作品を見てそれで何かを見つけるのではなく、いろんな作り手がいるという、その文化を一歩ひいて見てほしいと思っています。これは、8ミリフィルムについての、8ミリフィルムで撮られた、8ミリ映画です。撮影して、現像して、映写して、スクリーンにかかる。そこまで見せたいな、と思いました。それを、どうやって伝えようかという時に、ただ映像を見せるより、その空間性を楽しんでもらった方が早いかなと。あえて、会場の前の方に映写機は設置しました。僕の背中越しにスクリーンを見た人は、映画というより、映写パフォーマンスを見ていたようなものです。また、映写トラブルというか、冒頭のフィルムのローディングの時は、結構絡むことがあるんですが、少し大げさに騒いでみたりとか。それも込みで、映画です。私たちはコンテンツを作ってるんじゃないんです。映画は、データではありません。
Q: 5月に東京で上映された作品と、山形で上映された作品では構成が異なっていますが?
OK: ちょうど、山形での上映の話が出た頃、参加してくれてた、しまだが他界しました。ついには、死んだフィルムメーカーが参加する作品になっちゃったねっていう、話もしてたんですけれど。口では達者なことを言っていた、しまだですが、普段やってる仕事はロクでもなくて、パチモンの心霊ビデオとか、AVまがいの企画ものとかをやっていました。今回の上映に合わせて入れたのが、秩父の山で、UFOを飛ばしてる撮影現場を撮った素材です。僕が8ミリで彼を撮影したのはそれが最後で、それしか残ってなかったので、今回ああいう形で挟みました。久しぶりに見たら、懐かしいような。それでいて、なんでお前、馬鹿みたいな理由で、馬鹿みたいな面して、馬鹿みたいな死に方したんだ、なんてことも思いますが。フレームの中に残った彼の姿っていうのは、非常に楽しげにやっていたので、それはそれで見てる人に何らかのものが伝わればいいんじゃないかと思います。映画はそういうこと位しかできないだろうとも感じます。
(採録・構成:宇野由希子)
インタビュアー:宇野由希子、千葉美波
写真撮影:市川恵里/ビデオ撮影:小清水恵美/2011-10-11