ブレット・ゲイラー 監督インタビュー
ブレット・ゲイラーとミックスする:コピーレフト入門
Q: ピアツーピアでオープン・ソースなウェブ・カルチャーの出現で、誰もがプロデューサーという時代になりました。とは言え、すべての宣言がそうであるように、この映画はアイデアにあふれた思想家や実行家たちという、強烈な登場人物たちに依存していますね。この事実は、リミックス革命に矛盾していると思いますか?
BG: 一般参加型の文化という考えは、目新しいものではありません。かつては、それが当然の道理だったんです。誰しもが、自分のことをクリエーターだと思うのが普通でした。クリエイティブな人たちの地位が高くなったのは、この100年から150年の間の話です。クリエイトすることでお金をもらえる人たちのみが、価値ある物を作っていると思われるようになったんです。
文化のコンテクストの中で、“アマチュア”という言葉が軽蔑的な響きを持つようになったのは、そのせいです。ですからこの映画では、民俗文化への回帰という発想を祝福しようと試みました。そういう意味で、デジタル革命は本当にエキサイティングです。この映画を見る人には、私たち全員がクリエーターなのだということ、それは目新しい考えではなく、そうであるべきなのだということを感じ取ってもらいたいと思います。
しかしもちろん、私の映画はYouTubeのビデオではありません。意図的にそうしなかったのです。1年で映画を完成させることもできましたが、大がかりなものにしたかったので、この映画のために私自身の20代を犠牲にしました。私は、そういう人間なんです。でも必ずしも矛盾しているとは思いません。もちろん作るのにはたくさんのお金がかかり、正式には映画という形を取っています。でも私たちは、他のたくさんの要素を入れました。人々が制作に積極的にかかわりましたし、映画の中でも言及したように、この映画にはハイパーテクスチュアリティがあります。オーディエンスが制作にかかわってくれたからこそ、このような映画になったのです。
Q: この映画は、アイデアの流布とコントロールをテーマとしています。それは私たち全員に、直接深い影響を与えるテーマです。しかしデジタル革命は、ほぼ完全に私たちの世代の産物ですよね。私たちの父親の世代が、彼らが育ち、参加してきたコントロールのシステムを打ち破ろうと、一緒に努力することについて、どう思いますか?
BG: とてもいい質問ですね。映画を見ていただければ分かるように、私は世代間の対立を描くのが好きなんです。世代間の対立が、古い考え方を攻撃する土壌となるからです。レッシグにインタビューした時、彼は年配の世代のほとんどは、リミックス・カルチャーを否定していると語っていました。この映画に、よく浴びせられた非難は、こんなことは芸術とは関係ない、単なる盗みだ、剽窃行為によって文化の質を落としている、独創性を殺すことになる、などです。彼らは、「それじゃ金もうけできなくなる」とボヤいています。これはカウチポテト世代の考え方です。彼らはデジタル文化の出現にかかわっていなかった。ですからジェネレーション・ギャップは消えないのです。
では、どうやったらベビーブーマーたちを巻き込むことができるのでしょう? 私のプロデューサーはベビーブーマー世代で、この映画は、彼が実践してきた映画制作の古い慣習をぶち壊すものです。でも彼は、この映画の中のアクティヴィズム活動を評価することができた。そういう認識が人々をつなぐのです。それこそが年齢にかかわらず、私たちみんなをまとめる糸なのだと思います。大事なのは彼らに考えるきっかけを与え、これは大切な問題なのだと気づいてもらうことですから。
(採録・構成:太愉・山之内・ヘイワード)
インタビュアー:太愉・山之内・ヘイワード、アイソム・ウィントン/翻訳:村上由美子
写真撮影:オリバー・デュー/ビデオ撮影:鶴岡由貴/2009-10-12