スサンナ・バランジエヴァ 監督インタビュー
“開放”から“真実”をみる
Q: この映画は、もともと6時間だったものを編集し直したものだそうですが、編集する際に意識されたことはどんなことでしょう?
SB: この映画はもともと6回構成のテレビ番組として作られたものなんです。ですから、6時間バージョンの段階では、1時間ごとに主要人物がいるという状態でした。これを映画化する際に、いろいろな種類のものを敷き詰めて、ひとつのものにするように作ろうと思いました。
Q: ドキュメンタリー映画における出演者のプライバシーや人権について、どのような考慮をされていますか?
SB: この映画には過激な映像が含まれていますが、出演者たちはどのシーンでも、そこにカメラがあることを認識していました。隠れて撮った映像はありません。出演者たちを“カメラの暴力”から守る方法は、単純に“カメラを向けた時に「撮らないで!」と言われたら撮らない”ということ以外にはないと思います。そして、拒否されないためには、“信頼”されることが必要です。ですから私は、出演者との映画撮影の枠を超えた“人と人”としてのコミュニケーションを大切にしています。
Q: 今回の映画も、彼らと1カ月間、ビーチで生活してから撮影したそうですが?
SB: ビーチの人たちも、初めは撮られることに抵抗を持っていて、私たちもその状況の中では撮影すべきストーリーを見出すことができなかったので、結果的にそうなってしまいました。そして、彼らが徐々に私を信頼してくれたからこそ、強烈なストーリーも撮ることができました。あの1カ月は重要でした。
また、カメラに慣れ、私たちと親しくなるうちに、彼らの中に「もっと自分を見せたい」という“自信”が芽生えてきたようでした。ですから、上映されることにも抵抗がないのです。
Q: この映画を通して監督が伝えたかったことは何ですか?
SB: “真実”です。悪いことを隠さずに、ありのままの人間の姿を、もっと見てほしいと思いました。良いことしか見なければ、新しいものは見えてこないし、悪い部分が良くなるということもない。この映画は、社会から逸脱した人たち、プーチン大統領、テロといった様々なものを交錯、対比させることによって、“人間には必ず善と悪の両方の側面がある”ということ、“苦しみは人間をより人間らしくする”ということを感じてもらえる映画になったと思います。
(採録・構成:高田あゆみ)
インタビュアー:高田あゆみ、山本昭子/通訳:岡林直子
写真撮影:西岡弘子、海藤芳正/ビデオ撮影:西岡弘子/2007-10-06