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YIDFF 2005 YIDFFネットワーク企画上映
住めば都
カトリーヌ・カドゥ 監督インタビュー

人々の普段の生活に興味があります


Q: この作品を作ろうと思ったのはいつですか?

CC: 10年ほど前です。当時、自分で撮影しようとは考えていませんでした。しかし、木場に大手チェーンのスーパーマーケットができることになったのがきっかけで、町の姿を撮影することに緊急性を感じ、自分で撮ることを決意しました。それが2000年の始めのことです。赤い橋を起点とした木場の四季を撮ろうとしていましたが、赤い橋の工事が始まり、それならばと赤い橋の再建物語にしようと考えました。

Q: 赤い橋というのは、この作品においてどのような意味合いを持っているのでしょうか?

CC: 橋というのは、人間と人間をつなぐ象徴です。私とこの町とをつなぐものでもあります。それから、町の魂でもあります。木場には橋はたくさんありますが、焦点を絞るために赤い橋に着目しました。

Q: 監督にとって、木場の町や木場に住む人々とは、どのような存在でしょうか?

CC: 本当の家族よりも温かく迎えてくれるものです。遠くの親戚より近くの他人、という言葉がぴったりだと思います。人間は誰でも寂しがり屋な一面を持っているので、自分から周囲の人に声をかけることができれば、彼らは温かく受け入れてくれます。大都会に行くほど周囲の人との関係性も薄くなるので孤立していますよね。でも、本当はみんな人づきあいに飢えているのかもしれませんね。

Q: この作品を見たフランス人の方は、どのような反応をしていますか?

CC: 日本に行きたくなったと言っています。私自身、日本人はいつも走っていてせっかちというイメージがありましたが、木場のゆったりとしたテンポとやさしさに、すっかり中毒になってしまいました。パリの雰囲気はイライラしていますから、木場に帰るとホッとします。こういった日本をみんな知らないですからね。人が本当に住むところとは、こういうところだと思うのです。住居があり、働く場所があり、地元で暮らし地元で働いています。木場で暮らしている人は、高齢になってもこのような下町という環境で働きながら元気に暮らしています。最近、地元を離れて都会で働く人が増えていますが、それは正しいことではないような気がしますね。自分の町で活躍して自分の町を賑やかにすることのほうが、人間らしく楽しいと思います。大都会に出て働くことも間違いではないと思いますが、お金のための仕事になってしまいがちで、自分のためになっていないことが多いのではないでしょうか。木場で暮らす人々は、働くことによって人間関係を保っています。彼らは働くことに誇りを持っており、生きる価値観はそこにあるのだと思っています。

Q: 次回作についてお聞かせください。

CC: パリ在住の視覚障害者の方を、映画に撮りたいと考えています。彼の視線の代わりに、カメラで彼の住んでいる町を撮りたいと思っています。今回の作品では、脚本など特に作らないで撮影しましたが、次回は脚本やプロデューサーを準備して作っていきたいと思っています。私が一番興味があることは、人間のあり方や本当の姿です。人々の普段の生活に興味がありますね。

(採録・構成:影沢吉倫)

インタビュアー:影沢吉倫、柏崎まゆみ
写真撮影:宍戸幸次郎/ビデオ撮影:大谷紫津/ 2005-10-10