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YIDFF 2005 日本に生きるということ――境界からの視線
韓国映像資料院
李孝仁(イ・ヒョイン)氏 インタビュー  聞き手:岡田秀則

未来志向の映画史交流


 「在日」特集について、映画評論家で韓国映像資料院院長の李孝仁氏にお話を聞きました。聞き手は東京国立近代美術館フィルムセンター研究員・岡田秀則氏にお願いしました。


OH: 今回の特集の意義に関して、どんな感想をお持ちでしょうか?

YH: 山形国際ドキュメンタリー映画祭が「在日」を扱ったことには、大変意味があります。日本社会で生きている在日同胞たちの存在を確認できましたし、南北の分断という葛藤の中にある民団系・総聯系の同胞たちや、それを見る日本人たちに、それぞれを理解する機会をも作ってくれました。それに、入手困難な映像を集めて紹介したことも大変重要です。このような研究的意味合いの深い特集は、他の大きな映画祭では扱うのは難しいでしょう。山形映画祭のように、真摯な態度を持った映画祭が、この企画を取りあげた事実は大変重要です。

 また、過去の作品のみならず、たとえば『2つの名前を持つ男』(田中文人監督)などを扱ったことで、未来に向けての、韓日間の友情の基礎ができつつあることも確認できました。田中監督は、自分の師である岡崎宏三さんとの交流の中で金学成(キム・ハクソン)さんを知り、さらに彼について調べていくうちに、韓日の隠れた映画史を発見していきました。最初は素朴な動機でこの映画を作りはじめたのかも知れませんが、制作の過程で韓日映画交流史発見という、特別な意味を持つに至りました。

OH: 日韓の映画史を繋ぐ研究の始まりになる可能性を秘めていますね。

YH: その指摘は正しいと思います。韓国映画史の知られざる部分を、この作品は見せてくれました。そういう意味では、韓国映画人も問題意識を感じることができたのではないでしょうか。

 個人的な感想を言わせてもらえれば、映画の専門家のみならず、一般の市民が関心を持ってこの特集上映に来てくださり、100席の会場が満席になるという状況、そして、見方によっては非常に地味なこの特集を、最後まで見てくださった事実には大変感銘を受けました。

 そして、今まで会うことがとても難しかった、総聯系在日同胞と会えたことも大変良かったと思っています。在日を扱った韓国映画の中で、総聯系の人たちが暴力的に描かれているシーンを見て、とても申し訳ない気分になり、そのことを上映会場の総聯系の人たちに伝えたところ、「自分たちが作った映画にも、民団側をそのように描いた部分があるので、お互い様だし、それはもう昔のことではないか」と言ってくださいました。とてもありがたいことです。

(採録・構成:加藤孝信)

通訳:山崎玲美奈
写真撮影:畑あゆみ/ビデオ撮影:加藤孝信/ 2005-10-09