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YIDFF 2005 アジア千波万波
いつまで、いつか…。
ダーナ・アブラハメ 監督インタビュー

パレスティナの人々を新しい切り口で撮っていきたい


Q: 最初は、パレスティナでビデオワークショップをしていて、4組の家族との出会いによって撮影をすることになったそうですが、その出会いは、具体的にどのように監督ご自身の心境を変化させたのでしょうか?

DA: ドキュメンタリーの性格として、撮っているうちにいろんなことが起こりますよね。それによって自分の撮りたいものが変わってきます。何か起こるたびに最初考えていたものとは違うものになっていきます。ユースセンターで、4組の家族に出会った時に、たくさんの人たちを撮るよりも、彼らに焦点を当てていこうと思いました。それは4組の家族から力強さを感じたからです。それと同時に、パレスティナの人々の生活を撮っていきたいという気持ちがあったので、彼らの日常の生活に密着して撮ることにしました。それと、ドキュメンタリーを撮る人はお金がないから、そこに集中して撮っていこうと思ったんです。それから、私を含めた作家たちには、新しい切り口で撮っていきたいという思いがあります。今までのパレスティナのイメージとは違う切り口から撮っていきたかったのです。

 ビデオワークショップを行ったことによって、いろんな人とコンタクトをとることもできたし、キャンプにも参加することもできました。こうしたワークショップでの経験が、この映画の素地を作ったのだと思います。ちょうどこのワークショップがユースセンターの中にあったので、若い人たちとたびたびコンタクトを取って活動できたことも、今回の映画に少なからず影響はあったと思います。

Q: 上映後の質疑応答で、アメリカ内部でパレスティナに対するボイコット運動が2001年から2002年にかけて起こり、それに対する議論が盛んになった時期があった、とおっしゃっていましたが、そうした政治的問題も、今回の作品に何らかの影響は与えているのでしょうか?

DA: このアメリカ国内で起こったボイコットについて、フィルムメーカーと話し合う機会がありました。そこで問題となったのが、メディアのパレスティナに対する偏見です。これが一因となって、ボイコットが起こっているのだろうと考えました。そうした話し合いが、今回の映画のひとつのアイデアにはなっていますが、やはり、ビデオワークショップでの出会いというのが、一番大きくこの作品に関わってきていると思います。

Q: この映画は三世代にわたった人のインタビューを撮っていることで、パレスティナの歴史も理解しつつ、彼らがそこでどのような考え方を持つようになったか、ということがとても理解しやすかったのですが、映画を編集する時には、どこに注意を置いて構成されたのでしょうか?

DA: 特にと言われれば、若者に重点を置いたと思います。三世代を描くということで、どの世代も大事だし、当然過去も振り返る必要があります。過去への視点というのもとても大事だけれども、パレスティナのこれからをポジティブに考えた時に、若い世代は重要だと思ったので彼らに重点を置いたということはあります。実際に、この映画を見ていただいた多くの方々の反応も、若い世代の言葉がとても印象的だったというものでした。それは、これからを担う若者の声だったからだと思います。若い人たちというのは、自分たちの希望でもあるわけですよね。

(採録・構成:石井玲衣)

インタビュアー:石井玲衣、猪谷美夏/通訳:斉藤新子
写真撮影:猪谷美夏/ビデオ撮影:大木千恵子/ 2005-10-12