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YIDFF 2005 アジア千波万波
農家に還る
クォン・ウジョン 監督インタビュー

農家の輝く姿と悩む姿を


Q: この作品を撮ったきっかけは?

KW: 私にとって2本目の作品です。1本目は政府の農業政策への批判を表現した作品でした。農業や農家に関心を持たない、問題意識を持たない人々がいます。そういう人のために、農業の困難さや大変さを、農家の生きている姿を映し出すことで表現したいと思い、今回の作品を作りました。私も農業経験がないし、農家に生まれてもいないのですが、同じ世代の人に、映像を通して主人公になってもらって、関心を持ってもらうために作品を作りました。イ・グニョクさん夫婦の1年間を見せて、生活を解きほぐして、農業の大切さをわかってもらえると思いました。

Q: 撮る前と撮った後の心境の変化はありましたか?

KW: 1年を通して、農村の暮らしの難しさを描こうとしたのですが、イ・グニョクさんは、農業や農村社会の中で関係をうまくこなしていた。経済的な面では今年も成功していたのですが、1年後はわからない、賭け事のようだと言っています。他の人が不作で、自分たちが豊作だったということは皮肉なことだと思いました。農業はギャンブルだ、と言っていた姿を撮ろうとだんだん変わっていきました。

Q: イ・グニョクさんの魅力は何だと思いますか?

KW: 私がとても好きな部分として、心理的なものが簡単にぐらつかないところがあります。自分の道をまっすぐいき、それを行動が表すという人柄がよかった。言葉で表現するよりも、行動で表すといったことだと思います。

Q: お父さんの病状を話す姿は動揺していると思ったのですが、作品の中に入れたのは何か意図があるのですか?

KW: イ・グニョクさんは、お父さんを父親以上に農業人として尊敬していたので、特別な感情が出たのだと思います。

Q: 焚火のシーンが2回でたのはなぜですか?

KW: プロローグの焚火のシーンで、イ・グニョクさんは、農業の未来は不透明だと核心的なところを語ってくれました。彼の本質的な部分が現れているのでプロローグに使いました。2回目の焚火は、アスファルト農業の章で、農業以外でも戦う農民を伝えたかったからです。その活動が終わったことで、焚火を燃やし1年間を整理するという意味がありました。

Q: お父さんの葬式のシーンは、ほかの部分と違った印象を受けたのですが。

KW: 農業が代々受け継がれているということがなくなっている。でも、イさん家では受け継がれているので、お父さんの葬式を通してそれを表したかった。そして、私の好きなシーンのひとつに、お父さんが誕生日にイ・グニョクさんの畑を訪れるシーンがあります。そこで、彼の畑を見て一言だけ「なかなかやるじゃないか」とつぶやくシーンです。お互いに農業をする人として、感じるものがあったということを表しているので好きですね。

Q: 作品を作るうえで、軸となる考えはありますか?

KW: 彼らの生活の中で感じたことを、そのまま見ている人に同じように感じさせることだと思います。農業をしている人が自分や他の人とは違う人たちということではなく、夢を持って一生懸命に生きている姿を見せたかったのです。単純に農業の大切さというより、夢を叶えようとする姿が美しいと思ったので、それを観客に見せたいと思いました。

(採録・構成:佐々木将人)

インタビュアー:佐々木将人、早坂美津子/通訳:山崎玲美奈
写真撮影:鈴木隆文/ビデオ撮影:尾原由紀/ 2005-10-10