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YIDFF 2003 第18回国民文化祭・やまがた2003 ドキュメンタリー映画フェスティバル
朝昼晩ごはん
まんまさちこ 監督インタビュー

日本を好きになるために


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Q: この映画を撮ったきっかけは?

MS: 映画学校であるイメージフォーラムの、課題の1本として撮った作品です。映画を始める前は、油絵や彫刻、版画などをやっていて、毎年2、3回の個展をやりながら20代を過ごしたが、20代の終わりになって行き詰まりを感じ、違うものを模索していたときに、映画学校のチラシを見つけました。イメージフォーラムで、課題は年に3本ありますが、1本目はアニメーション、2本目はアンディ・ウォーホル風作品、3本目に、ドキュメンタリーとしてこの作品を撮りました。ご飯を主題に撮ったきっかけは、作品の中のナレーションで言っているように、父親が酔っ払って帰ってきたときに、「白いご飯を食べさせろ」と言い張っていたのが嫌だったという思い出です。映画を撮り始めた時は、両親も日本という国も嫌いでした。両親は「女性は結婚して子どもを産むのが一番」と考えており、絵や映画のような表現活動を続けることに否定的でした。また、日本の(都会の)閉鎖的な雰囲気が好きではなく、外国文化に対する憧れもあり、ニューヨークで暮らす日本人アーティストのところなどへ、旅行ばかりしていた時期もありました。しかし、外国で制作活動をしていくことはできない、中途半端な自分に気づかされ、日本で制作して、外国に招待されるぐらいになろうと思うようになりました。

Q: 日本を好きになるための映画だったのですか?

MS: 日本が嫌いだったので、どうやって日本を好きになろうかな、と思っていました。日本的な映像として、国会議事堂や、花火、テレビで話題になっていた靖国神社、日の丸ご飯に似ている国旗や、撮影に出かけて偶然会った社会鍋などを、無我夢中で撮りました。父親が渋谷で育って、空襲を経験していることから、渋谷の焼け野原の風景も入れました。その間に、ご飯の映像をいろいろなやり方で撮りました。楽しんでやっていたようでもあり、苦痛だったような気もします。いろいろなイメージが出てきますが、その意味は、見る人それぞれが考えてくれればいいと思いました。

Q: ご飯の上に、とてもたくさんの具を載せて撮るシーンがありますね。

MS: ご飯の上に、梅干や卵や海苔などの具をいろいろ載せて、アニメーションで撮りました。美味しそうではありませんが、友達の友達が、本当にそうやって食べているという話を聞いて、「やったー! そんな変な人が本当にいるんだ」と思いました。最初は、ご飯に箸を突き立てた映像なども撮りましたが、日本を好きになるための映画なので、そのシーンは使うのをやめました。

Q: 作品の完成後、日本が好きになりましたか?

MS: 今でも好きになる途中ですが、最初から好きだった部分があることに、気づかされもしました。高校生の頃から小津安二郎監督の映画が大好きだし、今は鎌倉彫りの会社で働いています。また、今までパン食が多かったのですが、ご飯をよく食べるようになったし、友人がいるニューヨークは別として、日本以外の国ばかり旅行したいとは思わなくなりました。撮影中に、渋谷でご飯を持って、「あなたは日本が好きですか」と叫んだときは、そのシーンはカットしてしまったけれど、中高年の人が「好きだよ」と答えてくれたこともありました。父親の言葉がきっかけで撮った映画ですが、両親は、今だに受け入れてくれないのが残念です。

(採録・構成:黒川通子)

インタビュアー:黒川通子
写真撮影:黒川通子/ビデオ撮影:黒川通子/2003-10-08 東京にて

まんまさちこ監督 Webサイト