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YIDFF 2003 第18回国民文化祭・やまがた2003 ドキュメンタリー映画フェスティバル
KAISEKI料理
加藤到 監督インタビュー

『コンビニ弁当大作戦』でした(笑)


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Q: この映画は、監督と櫻井監督との共同製作ですが、作品を作るきっかけは?

KI: 友人の居酒屋兼映画館が、10周年記念イベントをすることになって、そこで上映するため、僕と櫻井監督に食をテーマにした映画を作ってくれないか、との依頼があって作りました。

Q: では、コンビニ弁当を取り上げた理由を教えてください。

KI: 学生を集めて合宿をする機会があるのですが、弁当持参の時があって、弁当を広げるとほとんどの学生がコンビニ弁当だったんですよ。これはもう日本の文化だと思えて。考えてみると、24時間温かいお弁当があり、いつでも買えるということは、飢餓問題を抱えている国からしたら、とてつもない豊かなことじゃないですか。しかしその反面、99%の人がそれを選ばされている、それ以外のものは選べなくなっている訳だから、日本には、お母さんや奥さんが作ってくれる弁当の文化は、なくなってきているのではないかって、それは寂しいことだと思えたんです。ものすごく豊かな反面、すごく貧しいことだと思えて、このことを映像化してみたいと思いました。

Q: 作品の企画、撮影はどのように進められたのですか?

KI: 今回は、経験にもなるし、肩肘はらなくても、気楽につくれちゃうよってことを味わってもらいたくて、意識的に学生に手伝ってもらいながら制作しました。まず企画は、ゼミの人たちに、撮影は国民文化祭のワークショップの人たちに手伝ってもらって。みなさんのおかげでいいものができました(笑)。

Q: 作品を創る前と後では、コンビニ弁当の見方に変化はありましたか?

KI: やっぱりありますね。敬意を込めて食べるようになりました(笑)。やっぱりあれだけのものを家庭で作るのは大変ですよ。大量生産するにしても、結構細かいところまで気を使って、少しでもいいものを、っていう企業努力は見えますよね。しかし一向に豊かさと貧しさの問題は解決しないけれども。

Q: タイトルに込められた意図は?

KI: 最初は仮題で『コンビニ弁当大作戦』だったんですけど(笑)、それじゃあんまりなので。「温める」というのは、愛情の表現でも使いますが、作品のキーワードでもあるコンビニでの「温めますか?」は白々しく、フェイクっぽく聞こえて、『疑似加熱』というタイトルにしました。『蟲毒』と『疑似加熱』を合わせて『KAISEKI料理』としたのは、櫻井監督は食品添加物を、僕はコンビニ弁当の手間や値段を「解析」するという意味もありますし、また、2人ともチープな食品を取り上げている訳なんですが、それを皮肉っぽく日本料理の最高級料理である「会席」料理と掛けているという意味合いもあります。もうひとつはお茶会でお茶を出す前にお腹を温めるための「懐石」料理と掛けています。それは、「懐石」とは湯たんぽみたいなもので、石を温めておいて布に包んで胸に入れておくと温かいのもなんですよ。それは、「温めますか?」って話しでしょ。まさに「KAISEKI料理」ですね。

(採録・構成:矢部敦子)

インタビュアー:矢部敦子、綿貫麦
写真撮影:綿貫麦、蜂谷隆平/ビデオ撮影:石川千寿子/2003-10-09 山形にて