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YIDFF 2003 学校プログラム
砂の入った靴のままで
黄木優寿 監督インタビュー

「ウソツキは映像作家のはじまり」です


Q: この作品を作られたきっかけは?

OM: これは大学の卒業制作なのですが、3年の時にも、自分が出演して1本撮っていて、また出演したいなと思いました。本当のことを伝えたいと言って、作品を作る人もいるんですけど、僕の場合は、ウソがつきたいと思って作品を作っていて、自分が出ると本当っぽいんだけど、であるからこそ、面白いウソがつけるんじゃないかと思って、それがきっかけといえばきっかけですね。撮影はほとんどひとりでしています。この作品には、脚本というのもあまり無くて、撮りながら次は何を撮ろうかと考えていました。

Q: 観ていて気になる所が沢山あったのですが、まず、作品の冒頭から監督が語りかける“あなた”とは一体誰なのでしょうか?

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OM: 「あなたに出会って3年……」というフレーズをはじめに思いついたときは、特定の誰かがいたような気もするんですが、それは撮りながら変化していきました。あまり限定したくないというのもあって、まぁいろいろ想像して下さいという部分です。ゼミの担当教員じゃないかと言った人もいましたが、僕はそれは違うと思うんですけど(笑)。

Q: カメラを“自分の武器”というように表現しているところがありますね。

OM: その前に、僕が柔道家に「強い男の条件って何だろう?」と尋ねて、「木刀持ってる奴が一番強いよ」って言われるシーンがありますけど、卑怯じゃないですか木刀って(笑)。でも、カメラって何かなと思ったとき、自分にとってはコミュニケーションの手段かなと。単純に言えば、カメラを向ければこっちを向いてくれるとか。ちょっと卑怯だけども、コミュニケーションの武器かな、というのがあるんですね。こうして、何かを作って観てもらえるというのもそうです。カメラを最初に持ったのは、大学に入ってからなんです。大学にはグラフィックの勉強がしたくて入って、映像に来るつもりは全く無かったんですよ。でも、「たまにはこういうのもいいか」と思って行った、実験映像の上映会で衝撃を受けました。そこで、こういう映画があっていいんだと、自分がいかに映画というものに対して、固定的な考えを持っていたかということを、思い知らされたんです。

Q: 印象的なタイトルについては?

OM: 実は、これは安達くんという友達が「次のタイトルを決めてあげるよ」って、ぽろっと言った言葉なんです。そのときは、面白いと思いながら意味も聞かないで、でも心のどこかで、ずっと引っかかっていました。僕自身は、違和感とかそういったものを解消するのではなく、その違和感を抱えたままで生きていった方が面白いんじゃないってことに、勝手に解釈して使っています。

Q: 現在は、どのような作品を制作されていますか? DVではなくフィルムを使われているそうですが。

OM: 学部生のときは、とにかく笑わせることを中心に作品を作っていました。上映したときに笑ってくれるというのが、一番ストレートでわかりやすい反応だと思うんです。笑ってくれたということは、何かひとつは伝わったということで。いまは逆に、「そこだけじゃないぞ映像の楽しさは」というので、最初に惹かれた“映画は1秒24コマの組替え”という楽しさをまた思い出して、構造的なものを作ったりしています。フィルムに関しては、撮るにしても、編集するにしても、自分の思う通りにはいかないところが、非常に面白いですね。DVだと撮影から編集まで、自分のリズムを完璧に求めることができるんですよ。フィルムだと、自分が撮れたと思っていた映像よりも、良いか悪いかのどちらかで、思った通りには絶対撮れないんです。そこに興味が移って、最近はずっとフィルムで撮っていますね。

(採録・構成:横田有理)

インタビュアー:横田有理、田中陵
写真撮影:和田浩/ビデオ撮影:斎藤健太/2003-10-07 山形にて