english
YIDFF 2003 アジア千波万波
ビッグ・ドリアン
アミール・ムハマド 監督インタビュー

まだまだ喋り足りない !!


-

Q: この映画は、とにかく様々な人が喋りまくる、饒舌な作品だったと思いますが、その喋りを細分化して、モザイクのように構成していく作りになっていますね?

AM: 僕のイメージは、モザイクと言うよりも、ほとんど象徴的ですらある「ロジャ」というマレーシアの有名料理なんだ。それは八宝菜に似ていて、卵やキュウリやイカといった、一見相性の悪そうなものを混ぜ合わせて、上にピーナッツソースを掛ける料理なんだ。この「ロジャ」という言葉を混血の人に対して使うことがあって、それはののしる場合に使うこともあるし、誉める場合に使うこともある、とてもマレーシア的な概念だと思うんだ。マレーシアは多文化国家であり、多言語国家だからね。以前に作った劇映画の『Lips to Lips』でも同じようなアプローチをしているけど、今回の方が上手くいったと思うよ。

Q: 出演者の一部は、明らかに役者ですよね?

AM: 役者と仕事をするのが、とても好きだってことがあるよね。一緒にキャラクターを作ったりといったことがね。もうひとつの理由は、1987年10月は初めて僕がニュースを信用しなくなった時なんだ。周りの人が言っていることと、マスコミの言っていることが、食い違っていたからなんだ。ひょっとしたら、ニュースに出ている人たちは演技をしているのかな、と初めて思ったのがこの事件で、そのことを描きたかったからこういう作り方をしたんだ。とても直接的だし、面白い方法だと思ったね。あと、役者を使う方が映画が面白くなると思ったんだよ。なるべくたくさん喋る、お喋りな映画にしたかったからね。お喋りや美味しい食事、それにタバコなんかは、人生に無くてはならないものだからね。それに、僕はたどたどしく喋る人たちには、ついイライラしちゃうんだよ。だから、喋りの達者な人たちに映画に出てもらったんだ。

Q: いわゆる「フェイク」の人たちは、名前も含めて全く作り上げられたキャラクターなんですか? 「元ゼリーのセールスマン」なんて、いかにも創作のような気がしますが?

AM: マレーシアの観客が見たら、どれが創作でどれがそうでないかは分かるよね。みんな役者の名前は知ってるわけだから。ただし、キャラクターが「フェイク」でも、彼らが語るのは、どこかの誰かが実際にした体験なんだ。そのためにオーディションまでして、話をしてもらったわけだからね。M16ライフルの話をしてくれたのは、本当に元ゼリーのセールスマンだったんだよ。彼は21種類もの日本製のゼリーを売っていて、その名前を全部言えたんだ。でも、残念ながら彼は喋りがスローで長かったんだ。全く歯痒かったよ! 仕方がないからストーリーだけ頂いて、あとは役者に演じてもらったんだ。それに、彼の名前は実際のものとは変えているよ。「サラワク州から来た男」って設定にしたかったからね。サラワク州は、サバ州の隣にあるマレーシアでも最大の州だけど、メディアではほとんど取り上げられないんだ。彼らの目は、マレー半島の方にばかり向いているからね。みんなが「マレーシア」って言う時は、半島のことばかりで、ボルネオ島のサラワクやサバのことは、全く頭にない。だから、僕はこのキャラクターを作ったんだ。

 僕が気に入っている役柄は、トミー・ペイジのことを語っていた女性なんだ。「香水の販売員」って事にしたんだけど、これは僕が考えつく一番鬱陶しい職業なんだよ。この役を演じた女優は、こうした役柄をやらせたらピカイチなんだ――まるでそれ専門みたいにね。あまりに上手に演じすぎたんで、編集者がイラついて、出番をほとんどカットしてしまったくらいだよ。

(採録・構成:伊豫部希和、加藤孝信)

インタビュアー:加藤孝信、伊豫部希和/通訳:藤岡朝子
写真撮影:小谷真代/ビデオ撮影:加藤孝信/2003-10-03 東京にて