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ドラマティック・サイエンス! 〜やまがた科学劇場〜
  • 科学という芸術:ジャン・パンルヴェの愉快な世界
  • サイエンスの胎動:ドイツ・ウーファ社文化映画選
  • 生命のコスモロジスト:樋口源一郎の100年
  • 日本傑作選1:見る・知る・わかる!
  • 日本傑作選2:天然の美
  • 日本傑作選3:生きものの記録
  • 日本傑作選4:宇宙大作戦!
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  • C program 生命(いのち)のコスモロジスト:樋口源一郎の100年



    山形県天童市生まれの樋口源一郎監督追悼特集。生物の進化の謎を「動く絵」で追求し続けた映画作家の軌跡!


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    「“わかった”ことをわかりやすく説明するということよりも、“わからない”ものがどうなるか、という考え方の基本は、日本は案外少ないわけです。“わからない”問題を追求するって、日本じゃ全然金が出ません。食うや食わずでやらざるを得ないんだけども、見つかった時の面白さってのは、金のことなんか考えられないほど面白い! 新しいものを見つける面白みを伝えたいような気持ちで映画も作ってるもんですから、疲れないでこんな齢までやってるんじゃないかと思ってるわけです。」

    (2002年5月、ゆふいん文化・記録映画祭での発言)



    - 長崎の子

    Nagasaki Children

    日本/1949/日本語/モノクロ/ビデオ(原版:16mm)/20分

    演出、脚本:樋口源一郎 
    原作:永井隆・編「長崎の子供らの手記 原子雲の下に生きて」より
    撮影:村上喜久男 製作:平山大鳳 製作会社:大洋映画 提供:シネ・ドキュメント

    長崎の爆心地近く、在校生1,300人以上が原爆の犠牲となった山里小学校の生徒の手記を映画化。復興に立ち上がる子どもたちの姿を活き活きと描きながら、アメリカ占領下の厳しい表現規制の中で「あの日」の様子を精一杯再現している。



    - 声なきたたかい ―まつけむしの一生―

    Silent Battle: The Life of the Pine Moth

    日本/1955/日本語/モノクロ/16mm/20分

    演出、脚本:樋口源一郎 撮影:後藤淳 音楽:福見潤 
    解説:藤倉修一 製作:三井高孟、村山英治
    企画:林野庁 製作会社:三井芸術プロダクション 
    提供:東京国立近代美術館フィルムセンター

    松林に繁殖するマツケムシを主役に、生物間の食う・食われるの因果関係を探る。ロケハンの途中にマツケムシの有力な天敵・フタスジヒラタアブを発見したことが学界で注目され、樋口の作家生活の大きな転機となった。



    - 女王蜂の神秘

    Secret in the Hive

    日本/1962/日本語/カラー/16mm(原版:35mm)/33分

    演出:樋口源一郎 
    脚本:樋口源一郎、内木芳夫 
    撮影:小林一夫 音楽:間宮芳生 
    解説:川久保潔 製作:村山英治 企画:中外製薬 
    製作会社、提供:桜映画社

    -女王蜂を中心に数万匹が一糸乱れぬ秩序を保つミツバチ社会を解析する。情報伝達の手段であるダンス、仕事の分業体制、スズメバチとの闘争などから、あたかも社会全体でひとつの生物のように活動する姿を克明に記録していく。



    - 真正粘菌の生活史 ―進化の謎・変形体を探る―

    The Life History of True Slime Molds

    日本/1997/日本語/カラー/16mm/28分

    演出、脚本:樋口源一郎 撮影:石井董久 
    研究:樋口源一郎、石井董久 解説:和田篤
    企画:樋口生物科学研究所 
    製作会社、提供:シネ・ドキュメント

    -10億年前に地球に発生し、巧みな方法で環境に適応してきた真正粘菌。変形体のリズミカルな原形質流動など、肉眼では見えない粘菌の動きを顕微鏡撮影で捉える。微生物の不思議な世界を観察し続けた樋口が91歳で完成させた力作。

     


    -樋口源一郎(ひぐち・げんいちろう)

    1906年3月14日、山形県天童市生まれ。銀行に勤務しながら明治大学夜間部を卒業する。その後画家を目指し木村荘八のもとでルネッサンスを学ぶ。寺田寅彦の映画論を読んで芸術と科学の問題に興味を持ち、30代で映画界入り。1942年『空をまもる少年兵』を初監督。以後、最新作の2001年『きのこの世界』まで約60年間、90代後半まで現役の映画作家として活動を続けた。生物進化に関する未知見を微速度撮影で解明する映像研究で知られ、細胞性粘菌の細胞分化のメカニズムを追求した「映像論文」は世界的な評価を得ている。100歳の誕生日を目前に控えた2006年2月23日逝去。

    主な作品:空をまもる少年兵(1942)、長崎の子(1949)、白旗ぢいさん(1952)、声なきたたかい ―まつけむしの一生―(1955)、佐久間幹線(1956)、進みゆくビタミンB1(1958)、たのしい科学(1958〜60)、カメラとシャッター(1960)、女王蜂の神秘(1962)、M.I.B.マシン(1964)、四国 ―自然と伝統―(1965)、雨に考える(1966)、生命の流れ ― 血液を探る(1967)、奈良・大和(1968)、浮世絵(1969)、微生物の実験(1970)、街道に残る文化財(1974)、東ドイツの旅(1975)、岩礁に築く ―伊方原子力発電所建設記録―(1978)、きのこ(1980)、細胞性粘菌の生活史(1982)、野中兼山 ―流れる河は生きている―(1987)、弘法大師・空海(1988)、細胞性粘菌の行動と分化(1991)、真正粘菌の生活史(1997)、菌と植物の共生(1999)、きのこの世界(2001)