イントロダクション
山形市は、東京から350kmほど北上したところに位置する人口約25万の地方都市です。
山形国際ドキュメンタリー映画祭は、市が誕生して100年目を祝う記念事業のひとつとして1989年(平成元年)に始まり、その後2年に一度開催されて今年で7回目を迎えました。映画祭の創設にあたっては、故小川紳介監督が様々なきっかけを作りました。
本映画祭の特長としてよく挙げられるのが市民ボランティアの活動です。初めての映画祭が始まる前夜、故小川紳介監督の呼びかけによって集まった市民たちが支援組織を作り映画祭を手伝うことになりました。“山形で初めて開催される映画祭を成功させたい”という思いが募っての行動でした。その後、支援組織は「YIDFFネットワーク」として映画祭期間以外にも『ネットワークつうしん』を定期的に発行したり、山形に来る世界各国の監督や映画関係者と交流会を設けたり日常的にも活動を続けています。
またもうひとつの特長は映画祭期間中、漬物屋の土蔵を貸切にして毎晩開かれる「香味庵クラブ」です。これは、上映が終了した夜10時頃から始まる交流の場で、酒も食べ物もありますが、今観てきたばかりの映画の話をきっかけにした興奮と熱気があたり一面を包み、観客も監督も一体となって、とても深夜の出来事とは思えないほどの活況を呈します。さらに近年は世界各国の情報を収集・交換しあう貴重な場としても機能するようになりました。
この他には、1994年に開設された「山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー」があり、今年の作品を含めて世界中の監督から預かっている約3500作品のビデオと、インターナショナル・コンペティションで上映されたフィルムやビデオ約120作品を収蔵しております。契約を取り交わした作品については国内外の映画祭や公共上映等に貸出、上映されています。
また、フィルムライブラリーに併設されている試写室(40席)では、月2回「金曜上映会」を開催し、収蔵作品を始め館外からもフィルムを取り寄せ実験映画等も含めた幅広い内容の上映会を展開しています。さらに今年は次世代を育成するプログラムとして「高校生ワークショップ」を開始しました。
宮沢啓