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YIDFF 2015 日本プログラム
沖縄 うりずんの雨
ジャン・ユンカーマン 監督インタビュー

背景に何があるのか


Q: 「うりずん」は潤い初めという意味で、春頃から沖縄が梅雨入りする5月頃までの時期を指すということですが、この季節になると、4月1日から始まった沖縄の地上戦を思い出し体調を崩す人が多いと、作中で玉城(たまき)洋子さんがおっしゃっているのを聞いて不思議に思いました。

JJ: 戦争を体験している人たちだけではないんです。玉城さんが、平和を訴える短歌を作っていると聞いて会いに行ったら、由美子ちゃん事件のあった石川市で育っていて、ご自身も米兵に拉致された経験がありました。その時代を生きてきた沖縄の人たちには、占領のなかでもいろんな苦しい場面があり、辛い経験をしているのです。

 僕たちが取材に行ったとき、平和の礎から始まって、糸満、読谷村(よみたんそん)を通りましたが、行く先々で慰霊祭が行われていました。それは、そのすべての部落が戦闘地になり、犠牲者が出たということなのです。そして、毎年慰霊祭に子どもや孫を連れて行き、犠牲になった方々の魂の前で、もう二度とこのような戦争を起こさないと誓います。沖縄の人たちは、新しい世代に戦争の記憶を引き継いでいます。なので、直接沖縄戦を経験していなくても、うりずんの季節になると思いが強くなるのです。

Q: 第3部「凌辱」で、性暴力の加害者の元米兵にインタビューされていましたが、性暴力の被害にあった方のお話を聞いたりはされたのでしょうか?

JJ: いえ、僕たちは玉城さんの話で十分だと判断しました。そして加害者のロドリコ・ハープの話。やっぱり、レイプ――性暴力というのが、沖縄の70年間の歴史のなかに絶えずあったものなので、沖縄の戦後を語るには避けられないものでした。被害者がどのくらいいるのかを数字で理解することも大事ですが、実際にその背景に何があるのかを描きたかったのです。それが、加害者のひとりがどういう経緯でその事件に関わったのか、今はどう考えているのかということでした。ロドリコ・ハープは、とても素直な人で正直に話してくれました。彼はアメリカでは、あのようなレイプの事件に関わることはないと僕は思いました。沖縄だからそういうことが許されると考えたのだと。米兵が沖縄にいると、どうしても占領者の目で沖縄を見ます。沖縄の人たちと自分たちの身分は違うし、基地の周りの歓楽街での接客で「みんなが米兵を歓迎している、米兵は特別な権利を持っている」と考えてしまいます。

 第3部の「凌辱」ですが、これは性暴力のことだけではなくて、チビチリガマから始まる集団自殺というのも、同じように凌辱であるということです。また、人間を粗末にするということ、軍隊や基地の存在にも繋がっていきます。沖縄全体が、そういう状態に置かれているんだということですね。

Q: 監督は、日米関係がどうなっていくのが一番いいとお考えですか?

JJ: 辺野古の問題と、先日の集団的自衛権の問題は強く繋がっています。規模が違うだけで内容はまったく同じです。民意を無視して、強引にそれを通すという国家の力です。戦後70年の間、憲法と安保がずっと矛盾している現実があります。でも、これからを考えると、この矛盾を解決していかなければいけないと思います。平和な東アジア地域をどうやって作っていくのかを考えて、計画的にそれを実現していく方法を選ぶロードマップが大切です。すぐには解決できないでしょうけれど、この20年とか30年の間に新しい仕組みを作っていきたいです。

(採録・構成:木室志穂)

インタビュアー:木室志穂、米田麻衣
写真撮影:沼田梓/ビデオ撮影:沼田梓/2015-10-06 東京にて