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YIDFF 2013 それぞれの「アラブの春」
良いはずだった明日
ヒンド・ブージャーマア 監督インタビュー

革命が起こった理由


Q: 息子を連れて家を探す様子や、涙ながらに今の生活を語る様子から、アイーダの苦労や政府に対する不満がよく理解できました。この映画はどのようにして作ったのですか?

HB: きっかけとは言えませんが、偶然アイーダに出会ったから、この映画ができました。独裁者が出て行った日、私はすぐ街に出ました。これから起こることは何でも記録したいと思っていました。その矢先、住居を探して、不法侵入しようとしていたアイーダに出会いました。「あなたは革命のほうが大事ではないんですか?」と聞くと「家がなければ何も始まりません」と。それで興味を持ち、彼女を追いかけることにしました。彼女を追うことで、なぜ革命が起こったのかということを、深く理解することができました。

Q: 革命のために活動している人々よりも、彼女を選んだ理由は何ですか?

HB: 彼女を追いかけることのほうが、私にとって重要だったからです。彼女は貧困層の人のひとつの例です。彼女のような人がたくさんいるのです。だから革命が起こりました。私は、彼女を撮ることで、貧困を理解しようとしていました。しかし、失業手当がなく、社会保障は最低賃金の半額以下、家賃は最低賃金よりも高いという現状や、違法行為が当たり前の社会を見て、国としての問題が大きいのだとわかりました。

Q: なぜ革命が起こったと思いますか?

HB: それまでの生活にうんざりしている人がたくさんいました。彼らはその生活に耐えかね、革命を起こしました。彼らは皆、革命に希望を持っていました。生活が良くなることを期待していたのです。しかし、革命後の選挙では、思っていたような結果が得られませんでした。またうんざりするような生活が続きました。けれど、革命によって独裁者が出て行き、報道や発言の自由を獲得できました。革命前はできなかったことが、例えば政治家の批判などが、できるようになりました。

Q: アイーダと息子の喧嘩のシーンから始まり、同じくふたりの喧嘩のシーンで終わっていますが、どのような意図があったのでしょうか?

HB: 1年以上撮り続けて、何度も何度も彼らの喧嘩がありました。彼らは毎日喧嘩していました。同じことの繰り返しなのです。時が経つに連れて、彼らの関係性には多少の変化があるかもしれません。しかし、アイーダの人生は同じことの繰り返しで、前に進みません。彼女の側で撮り続けていると、私の国の現実に直面し、私も彼女と同じように怒りや無力感を感じました。私たちは、国に対して何もできないと感じました。

Q: この映画は誰に向けて作ったのですか?

HB: 作っているときは、そういうことは考えていません。題材があって、“撮りたい”と思うから撮りました。“誰に見せるか”や、“誰に見てほしい”などはまったく考えていません。映画は物語です。物語としてきちんとできあがっていれば、どこの国の人が見ても通用するでしょう。これは初めて撮った映画です。次に撮る映画はフィクションの予定です。ドキュメンタリーは時間をかけて作れるところが気に入ったので、機会があればまた撮影するでしょう。私は今、監督として勉強中なので、これからいろいろな映画を撮っていきたいと思います。

(採録・構成:山田琴音)

インタビュアー:山田琴音、野村征宏/通訳:カトリーヌ・カドゥ
写真撮影:桝谷秀一/ビデオ撮影:桝谷秀一/2013-10-14