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YIDFF 2007 アジア千波万波
OUT: ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト
ウム・フェミニスト・ビデオ・アクティヴィズム
イ・ヨン 監督、チョソク・スネ 監督、イ・ヘラン 監督 インタビュー

表現することで知ること


Q: この作品は、前作『OUT: レズビアンの何が悪いの?』の続編ということなのですが、続編を作ったのは、10代の主人公を見続けていこうという思いがあったからなのでしょうか?

イ・ヨン(LY): 1作目は、いろいろ取材をしていく過程で、短くてもいいから、10代のレズビアンのことを知らせようと撮りはじめました。そして1作目を作っている時に、これは深く深く入り込んで、もっともっと知らせていきたいから、次も作ろうと考えました。またこの作品のもうひとつのタイトルとして、「ホモフォビアを叩きのめす!プロジェクト」というのがありますので、そことも関連づけて、そのドキュメンタリーシリーズのひとつという位置づけもあります。実は現在3作目を撮っている最中で、本作品の主人公のひとりであるチョンジェさんと、その母親との関係がどのように変化していくのか、というのを追っていく予定で撮影をすすめています。

Q: 主人公の3人が映画で自分のことを話すことで、彼女たちの心境の変化はありましたか?

LY: 映画を制作し終わった後、上映をする時に彼女たちに一緒に来てもらって観客と会い、話をし、観客と意志の疎通をはかるということをしてもらいました。その時に、どのような変化があったのかを、私たちが彼女たちに聞いてみると、ひとり目のチョンジェさんは、映画に出たことで母親が自分のことを認めてくれて、母親との関係も良い方向に変化して幸せだと言っていました。また彼女は、もっと自分のことを表現したいので、自分も映像活動家になりたいということで、10代のレズビアン映像活動家として作品を撮っています。ふたり目のチョイさんは、自分と向き合うことができ、自分を知れてうれしいと言っていました。3人目のコマさんは、映画に出たことで様々な人と心の交流がはかれて、自分は慰めを得られたし勇気も出たので、心を通わせることができ幸せだったと言ってくれました。彼女たちみんなに、心の中に何かつかえていたものがオープンになったような、心境の変化があったようです。

Q: ラップのリズムにのって言葉を伝えるというのが、聞いていてとても新鮮でした。

チョソク・スネ: ラップは、10代の彼女たちが歌詞を書いて、曲は20代のレズビアンの方に書いてもらいました。その20代のレズビアンの方は、音楽を通して、何か自分を語る活動をしたいと思っていたのですが、勇気がなかったそうです。しかし、自分たちの口で自分たちのことを語っている10代の彼女たちの姿に、刺激を受け勇気をもらって、曲作りに参加してくださいました。エンディングで流れる曲は、20代のレズビアンから10代のレズビアンの人たちへのメッセージ、という形で作ってもらいました。20代の彼女は、この映画に加わったことで考え方が変わって、今ではオーディオ・アクティヴィストといった立場で活動しています。この映画を通じて、3人の主人公の他にも、すごくいろいろな人たちが変わり、孤立していた人たちがつながり世界が広がったような気がします。これほど1本の映画で変化があるんだなと改めて思いました。

(採録・構成:河田こずえ)

インタビュアー:河田こずえ、丹野絵美/通訳:根本理恵
写真撮影:鈴木隆/ビデオ撮影:楠瀬かおり/2007-10-07