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YIDFF 2007 アジア千波万波
過疎の断片たち
木村拓朗 監督、三好宏明 監督 インタビュー

ぼくらが見た風景を断片のまま提示して感じてもらいたい


Q: この映画を撮ろうと思った経緯を教えてください。

三好宏明(MH): 木村くんと一緒に映画を作る学校に行っていて、そのまま卒業して今は普通に働いているんですけど、あるときふたりでNHKのミニミニ映像大賞というのに応募してみようということになり、それが放送されて、また作品を作ってみようと思い始めました。そして、山形でドキュメンタリー映画祭というのがあるらしいというのを知り、締め切りまで作って出してみようと。今ここでこうしているのなんて想像もしてなかったです。

Q: ドキュメンタリーを作られたのは初めてですか?

木村拓朗(KT): 学生時代の課題以来です。仕事をしていると日々忙しくて、なかなか作品をつくるのが難しいのですが、とにかく最後まで作って出してみようということで出しました。

Q: あの過疎の島に行ってみようと思ったのはなぜ?

KT: 去年の今頃テレビでドキュメンタリーを見て、ふたりでこの島に行ってみようという話になりました。

Q: 島の人に警戒されたりしませんでしたか?

MH: 1週間くらいの滞在だったんですが、最初からカメラを廻すのは島の人に失礼だから、最初の3日間くらいは挨拶して回っていました。3日目からビデオ片手に散歩していて、漁師さんに船に乗せてもらったり、語り部のおばあさんに出会って話が聞けたりしました。

Q: そこに行く前に何かテーマがあったのでしょうか?

MH: なにか最初にテーマがあったわけではなくて、僕らが行ってなにかしら感じたことを映像そのままで作品にしてみようと思ったんです。

Q: 最初にテーマがなくても、編集する段階で意味や意図が生まれてくると思うのですが?

MH: やっぱり、その島について問題提起したいなら、1週間という期間は短すぎて失礼で、何もわからないと思う。でもぼくらがその島で見てきたとおりのことを見てもらいたいなと思ったんです。断片をそのまま提示しようと思って編集しました。

Q: 訴えたいメッセージはなくても、この作品には、セリフが少ないこと、音楽、モノクロのような青みがかった色のトーンなどはっきりと個性があると思います。

MH: それはその島で僕らが感じたことが、自然と出てしまったんだと思います。カラー情報を破棄して、自分で青色をのせていきました。

KT: 音楽も映像に合わせて僕が作りました。

Q: それがわびしいというか、寂しい感じをかもし出していると思います。特にテーマはないけど、なにか心に残る、つげ義春の旅行記を読んだときのような感覚を受けました。

KT: 影響があるかはわからないけど、つげ義春は僕も好きです。

MH: “テーマ”というほど、僕らにとってもその島についてはわからないことばかりで、ならばその“わからない”まま作品にしてそのまま感じてほしかったんです。

Q: 今後もおふたりでドキュメンタリーに限らず、作品を作られていく予定ですか?

MH: 1920年代のドイツの影絵アニメーションに興味があって、こういうものを作るのにチャレンジしてみようかと話しています。

(採録・構成:我妻千津子)

インタビュアー:我妻千津子、峰尾和則
写真撮影:山本昭子/ビデオ撮影:峰尾和則/2007-10-09