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YIDFF 2007 インターナショナル・コンペティション
彼女の墓に花をそえるのは私
ハーラ・アルアブドッラー 監督、アンマール・アルベイク 監督 インタビュー

蜘蛛の巣の網の目のように人生を描きたい


Q: この作品を作ったきっかけは何ですか?

ハーラ・アルアブドッラー(HA): 私は今50歳で、長年映画業界で多様な作品を作ってきましたが、いろいろな問題が私たちの社会にはあって、それについてのドキュメンタリーをずっと作りたかったのです。そんな時、アンマールさんと偶然知り合いました。彼がこれまで撮ってきた作品はどれも短編でした。そしてどこからも支援をもらうことなく、自分で作品を作っていました。私は彼と一緒に長編を作りたいと思い、私がどういう作品を作りたいのか話し合いました。この映画のプロジェクトに関しては長い間温めていたのですが、なかなか実現しませんでした。共同制作をするためには大きな信頼関係を築いたり、いろいろな忍耐なども必要となります。

Q: この作品は登場人物のディティールがほとんど省かれていますが、それはなぜでしょうか?

HA: 私は自分の生き方をさらしたいのではありません。私がこの映画で伝えたかったことは、友人や私自身のことではなく、一般的な女性が抱えている傷や人生の問題に関してです。傷というのは政治や社会の問題だったり、映画が作りたくてもままならないという状況だったり、それぞれの女性が問題を抱えていて、それを詩を通してまた歴史を絡めて、自分たちが経験した傷を読みあげるというか表現したつもりです。たとえば私がどうして亡命したのか、女友だちのひとりがなぜ刑務所に入っていたのか、というような詳細についてインタビューして聞くのは簡単ですが、あえてそれをしなかったのは、個人のプライバシーの問題に関わるということではなく、もう少し一般的な普遍性のある女性――人間が抱える人生の問題や傷について描きたかったのです。それによって地域的な問題、私たちの住んでいる国の問題が見えてくると思ったからです。

Q: 作品の始まりのほうで蜘蛛の巣のような映像がありますが、これにはどういった意図があるのでしょうか?

アンマール・アルベイク: 蜘蛛の巣では、細かい網の目で繋がれた人生を構成するいろいろな素材、構成部分をかき集めた地図のようなものを表現したかったのです。蜘蛛の巣というのは昔から生と死の象徴でもあって、たくさんのものが編みこまれていて、突然死が訪れるといった象徴です。私たちはそういうものを探していて、蜘蛛の巣の他にも川、水、木といったものを使いました。この映画のようにひとつの映画をふたりの監督が撮るというのは変わったことだと思います。私たちの名前のタイトルの後に蜘蛛の巣のシーンがあるのですが、これは間接的に映画がふたりで作られたということを象徴しています。蜘蛛の巣の網の目のように人間関係が絡み合って作られたということを表したかったのです。私たちだけではなく、映画の中の登場人物も蜘蛛の巣のように絡み合って社会を作っているのです。それから蜘蛛の巣で蜘蛛が動いて男の人の軍服が出てきますが、それによって表したかったのは軍的な、要するに権威に従う人々、従わなくてはならない人々、そうしたルールによって縛られている人ですね。殺す人、殺される人を蜘蛛と蜘蛛の巣にかかった虫に喩えているのです。

(採録・構成:木室志穂)

インタビュアー:木室志穂、奥山奏子/通訳:山本麻子
写真撮影:園部真実子/ビデオ撮影:園部真実子/2007-10-08