佐俣由美 監督インタビュー
自分が楽になるためにつくったもの
Q: この作品は、大学の講義での課題として撮られたそうですが。
SY: はい。大学で映像コースに所属していて、2年生の時に作品を撮ってクラスで上映する、という課題があったんです。テーマは各自、自由でした。
Q: 生前のお父さんを撮っていたのは、この作品のためだったのですか。また、いつ頃撮られたものなんでしょう。
SY: (父の映像は)特に作品にしようと意識して撮ったものではなくて、たまたま実家に帰ったときに、何気なく撮ったものです。だけど心のどこかで、父の姿を形として残しておきたい、そして誰かに見せたい、という気持ちがあったのかもしれません。撮ったのは課題が出される前のことです。
Q: 作中で「成長するために」この作品を撮ったとありましたが、撮っていく過程で自分のなかで変化していったこととは? また、作品の終わりで「すっきりした、外に出せた」と言っていますが、その時からしばらく経った現在はどういった心境なのでしょう?
SY: 作っている間はただ「作品にする」ということしか頭にはなかった。その過程で変化したことっていうのはないです。誰にも知られてはいけない秘密(父のこと)を持っているということが重荷で、そしてそれを知られることが、とてもこわかった。自分の中での変化を感じたっていうのは、むしろ上映した後のほうです。知られたくなかったことを、クラスの人たちに上映という形でぶちまけたということで、人間関係が変わってしまったということはなくて。ただ、自分の過去やコンプレックスを他人に知られている、知られていないにかかわらず、人と接することに重要なのは、相手に対する自分自身の姿勢なんだな、ということに気づいた。そのことが自分にとって大きな変化でした。
Q: テンポのよい独特なカット割が印象的でしたが。
SY: 撮りためていたもの、課題のために新たに撮ったものの組み合わせで、構成とかは自分の中に元々あったものではないです。ただ、見る人に知ってもらいたい部分を、意識して繋げていったという感じで。今でも自分が一から組み立てた作品、という実感はあまりないです。まわりの状況が、自分の中から引き出してくれたもの、というふうに自分では感じています。
Q: 作品を作る前、作った後の父に対する心境の変化は?
SY: 作品を作る前、作った後というよりは、(父が)亡くなる前、亡くなった後のほうが変化はありました。それまで、幼いころから父に対して抱いてきた嫌悪感や、どうして自分の父はこんな人なんだろうっていう気持ちでいっぱいだったんですけど、実際いなくなってしまうと、また違った視野が開けてきたりして。もっと早くに(父に対して)色々な方向から見ることができたなら、(生前の)父に対する態度や見方も違うものになったのかな、と思います。
Q: この作品は今、どのようなものとして自分の中に存在しますか?
SY: すごく直接的で、暴力的な作品だと自分でも思います。自分が楽になるためにつくったものですね。もし自分と同じような境遇の人がいて、共感してくれる部分があったならうれしいです。
(採録・構成:林下沙代)
インタビュアー:林下沙代、佐藤亜希子
写真撮影:小田嶋真弓/ビデオ撮影:森田雄、園部真実子/2003-10-03 山形にて