故郷から離れて――台湾における災害映像記録と「土地」をめぐる闘い
黄淑梅(ホアン・シューメイ):未来の世代のために
1999年の921大地震以降、中寮郷の被災者住民らによる家とコミュニティの再建を支援者として長期にわたり記録し、その後も災害と自然環境、変わりゆく人の暮らしを主題として映画制作を続けている黄淑梅の活動と作品を紹介する。
台湾マンボ
Formosa Dream, Disrupted寶島曼波
- 台湾/2007/中国語、台湾語/カラー/デジタル・ファイル/145分
監督:黄淑梅(ホアン・シューメイ)
撮影:林立翔(リン・リーシャン)、楊重鳴(ヤン・チョンミン)、王宝蓮(ワン・バオリエン)、黄淑梅
編集:楊凱諺(ヤン・カイエン)
共同製作:呉乙峰(ウー・イフォン)、 李中旺(リー・ツォンワン)、郭笑芸(グオー・シャオウィン)、李雅芬(リー・ヤーフン)、林錦慧(リン・ジンホゥイ)、陳亮丰(チェン・リャンフォン)、李佳音(リー・ジアイン)、黄鈺珊(ホアン・ユーシャン)、林秀華(リン・ショウファ)
提供:黄淑梅
台湾921大地震とそれに伴って発生した大規模な地滑り・土石流により、壊滅的な被害を受けた南投県中寮郷。 清水村に隣接する12の被災世帯は、山に近い別の土地を借り、一刻も早い家屋の再建を望むが、郡政府の頑迷な官僚主義と規制に阻まれ続ける。監督は彼らの長く苦しい闘いに同伴し、被災者救済に対する政府の硬直的な姿勢を浮き彫りにしていく。YIDFF 2005「大歩向前走 ― 台湾『全景』の試み」 にて前作『中寮での出会い』(2005)を上映。
子どもたちへの手紙
A Letter to Future Children給親愛的孩子
- 台湾/2015/中国語、台湾語、日本語、ルカイ語/カラー/デジタル・ファイル/96分
監督:黄淑梅(ホアン・シューメイ)
撮影:頼育章(ライ・ユーツァン)、黄淑梅
編集:蔡宜芬(ツァイ・イフン)
提供:黄淑梅
1999年の921大地震の被災地を撮影していたとき、監督は深夜、地滑りに襲われる夢を見る。10年後、その悪夢はモーラコット台風によって現実のものとなった。そして過去の植民地時代より現在に至るまで、この美しい島の自然が為政者や人々によってどのようにぞんざいに扱われ、損なわれてきたかをたどり、その負の記録を未来の世代へと伝えていく。
帰郷
Coming Home回家
- 台湾/2018/中国語、パイワン語/カラー/デジタル・ファイル/99分
監督:黄淑梅(ホアン・シューメイ)
撮影:楊重鳴(ヤン・ツォンミン)、頼育章(ライ・ユーツァン)、荘栄華(チュアン・ロンファ)、陳香松(チェン・シァンソン)
編集:蔡宜芬(ツァイ・イフン)
アニメーション:林欣昉(リン・シンファン)
提供:黄淑梅
台風モーラコットによって壊滅的な被害を受けた南部・屏東県の山岳地域。原住民族のルーツを持つ人々が、災害によって先祖伝来の土地が失われ、民族独自の伝統文化も消えてしまうという危機感から、自然豊かなその土地に戻り、子どもたちに言葉や伝統文化、生活の知恵、そして部族の魂を伝える教育活動を始める。
1969年台南・白河区生まれ。世界新聞専科学校ラジオ・テレビ科を卒業。90年に全景映像工作室に参加し、ドキュメンタリー映画の現地インタビューの助手として働く。翌年自身の映画制作を始め、また台湾各地でドキュメンタリーの上映推進活動を担当。2006 年、故郷に戻り、現在もインディペンデント作家として作品を制作。99年の921大震災後、4年半にわたり震災復興の進捗を記録、06年に『中寮での出会い』(YIDFF 2005で05年版を上映)、07年に『台湾マンボ』を完成させ、ともに台湾国内でさまざまな映画賞を受賞。最新作は『帰郷』(2018)。
ディスカッション 災害とともに生きる ― 台湾と日本における映像記録運動の現在
今日のデジタルメディアの変容は映像の氾濫を起こし、視覚情報の波がわたしたちの生活に押し寄せている。こうした時代にあって、わたしたちは映像記録によって災害のあり様をどのように伝え、どのように受け取っていくことが可能だろうか。撮影、編集、そして上映までを射程に入れ、記録すること、伝えること、そして表現について考えていく。
- 日時:10月15日[火]15:30−18:30
- 会場:山形美術館2 *逐次/同時通訳:日本語・英語
- 登壇者:
- 林木材(ウッド・リン/台湾国際ドキュメンタリー映画祭ディレクター)、黄淑梅(ホアン・シューメイ/映画監督)、小森はるか(映像作家)、相川陽一(社会学・同時代史研究者)、門林岳史(メディア論・表象文化論研究者)
- 司会:細谷修平(美術・メディア研究者)