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バシュー、小さな旅人

Bashu, the Little Stranger
Bashu, Gharibehyeh Koochak

イラン/1985/ペルシャ語、ギーラーン語、アラビア語/カラー/デジタル・ファイル(原版:35mm)/120分

監督、脚本、編集:バハラム・ベイザイ
撮影:フィルーズ・マレクザデ
プロダクション・デザイン:バハラム・ベイザイ、イラジ・ラミンファル
衣装:バハラム・ベイザイ、イラジ・ラミンファル
出演:スサン・タスリミ、パルヴィズ・プールホセイニ、アドナン・アフラヴィアン
製作:アリ・レザ・ザッリン
製作会社、提供:児童青少年知育協会(カヌーン)

イラン・イラク戦争下のペルシャ湾岸より逃れ、カスピ海沿岸の村にたどり着いた10歳の少年バシューを主人公に、言語の異なる村人との間に繰り広げられる騒動を描いた劇映画。イラン南西部フーゼスターン州のアラビア語地域に暮らしていた少年バシューは、イラクからの砲撃に驚き、飛び乗ったトラックに揺られてイラン北部ギーラーン州の村に着く。出稼ぎで行方知れずの夫を待ちながら子どもたちと畑仕事をしていたナイは、突然現れた知らない言語を話す少年に驚くが、家に連れて帰り世話をする。マイナー言語に焦点を当てた、子どもと女性のシンボリックな演出が特徴的な教育映画。戦時下に国威発揚ではなく、異質な他者の包摂を描いたベイザイの、映画人としての矜持が垣間見える。1985年に完成したが、戦争終結後の1989年まで公開できなかった。



水、風、砂

Water, Wind, Dust
Ab, Bad, Khak

イラン/1989/ペルシャ語/カラー/デジタル・ファイル(原版:35mm)/70分

監督、脚本:アミール・ナデリ
撮影:レザ・パクザド
出演:マジッド・ニルマンド
製作会社、提供:イラン国営放送

故郷が湖が干上がるほどの干ばつに見舞われたため、出稼ぎ先から急遽帰郷した少年。井戸も涸れ、生き物は死に絶え、一面砂漠化した地にたどり着いた時、家族も住人たちも集落を去った後だった。主人公の少年が家族を探して、ひたすら砂嵐の中を彷徨う作品で、風の吹きすさぶ音の合間に、置き去りにされた赤ん坊の弱々しい泣き声、移動する住民たちが互いを奮い立たせるかのように唄う歌、家畜の屍を食らう野良犬の唸り声などがはさまれる。イラン・イラク戦争で荒廃した街をロケ地に、主人公の少年が家族を探す『Jostoju-ye dovvom(捜索2)』(1981)のバリエーションともいえ、過酷な環境の中で生き抜くために水と食料を求める生の力強さを、ひとつの様式にまで高めた傑作。